研究課題/領域番号 |
20J21882
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
鳥本 万貴 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 水素製造 / メタン転換 / 電場触媒反応 / 表面プロトニクス / 不均一触媒 / 水蒸気改質 / 天然ガス |
研究実績の概要 |
メタン改質反応は電場を用いることで150℃という低温でも反応が進行する。電場中では通常の熱触媒反応と異なり、担体表面で伝導するプロトンがメタン活性化の鍵となる。本研究は、このように特異な表面反応における担体・金属の役割を解明し、高性能な触媒を開発することを目的とした。 本年度は、電場中メタン水蒸気改質反応において高活性を示す担体物性を調査した。電場中では、担体上でのプロトン伝導がメタン活性化において重要な要素になることがこれまでの研究で示唆されている。そこで、活性点であるPdを様々な担体物性を持つ酸化物の上に一様に担持した触媒を調製し、担体物性の違いが活性に及ぼす影響を調査した。調製した触媒は熱触媒反応では同様な活性を示したが、電場中では大きく活性が異なり、CeO2が最も高活性であった。XPS測定の結果、各担体上に担持されたPdの電子状態は同様であり、担持金属ではなく担体物性の違いが活性の差を生み出していることが示唆された。また、CeO2が高活性を示す要因を解明するため、交流インピーダンス測定による表面プロトン伝導性の測定を含む表面物性を評価し、活性を結びつけて解析した。結果、プロトン伝導は、水が解離吸着し生成したOH基を介して起こるが、CeO2はルイス酸点(金属カチオン)が多く、水が多く解離吸着して存在するため、プロトン伝導性が向上することを解明した。更に活性を上げるため、CeO2に異種金属を添加し表面物性を変えた酸化物を調製し、活性を評価した。結果、Alを10%ドープした担体はCeO2より高活性であった。Alをドープすることで表面構造が歪み、水の解離吸着性能が向上するためであることを解明した。 また、高性能を示す担持金属触媒の開発にも取り掛かった。Ni系合金触媒を調製し、第二金属が活性や選択性、耐久性に及ぼす影響の調査を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、電場中メタン水蒸気改質反応で高活性を示す担体物性を解明することができ、本研究課題における目的の一つを達成した。また、電場中で高性能を示す担持金属の要件についての調査も開始しており、次年度に達成することが可能であると見込まれる。そのため、おおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、昨年度から続けている電場中メタン改質反応において高性能を示す担持金属の要件についての検討を完遂する予定である。メタン炭酸ガス改質反応は、メタン水蒸気改質反応と同様に、電場中で表面プロトン伝導が活性向上の鍵となり、低温でも反応が進行する。本反応は温室効果ガスであるメタンおよび二酸化炭素を化学利用できるメリットがあるが、炭素析出が容易に起こるという課題が存在する。そこで、Ni系合金触媒を用いて、炭素析出を抑制するだけでなく活性を向上させるような触媒開発を行うことを目的とする。 まず、NiにZnやFeなどの第二金属を添加した合金触媒を調製する。第二金属添加による電子状態の変化、構造の変化はXAFS,XPS,CO吸着IR測定等によるキャラクタリゼーションで解析する。さらに、調製した合金触媒の活性、選択性、炭素析出に対する抑制能を調査する。合金化によるどのような効果が、電場中の触媒性能に影響を及ぼすのかを解明し、高性能な合金触媒を開発する。
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