研究課題/領域番号 |
20J21900
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大本 敬之 名古屋大学, 生命農学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | シアル酸 / 糖鎖 / 発生 / メダカ / 遺伝子編集 |
研究実績の概要 |
本年度は、以下の4項目について研究が遂行された。 (1)α2,6-シアル酸転移酵素IとII遺伝子のノックアウトメダカの表現型解析: 遺伝子編集技術CRISPR-Cas 9法を用いて樹立されたST6Gal IとII遺伝子のノックアウトメダカ (ST6Gal I-とII-KO)において、昨年見出したメダカの孵化前段階における心臓の形態異常や拍動異常について、さらなる表現型の解析を行った。本年度は、この表現型について画像解析技術を駆使して、両者の心臓の異常を定量的に解析することに成功した。 (2)α2,6-結合シアル酸 (Sia)担体タンパク質の同定: 昨年度に引き続き、質量分析を用いて、心臓におけるα2,6-Sia担体タンパク質の更なる同定を試みた。その結果、昨年同定した分子Xに加えて、分子Yを同定することに成功した。また、ウサギを用いて、同定した分子XとYに対するポリクローナル抗体を作製することに成功した。以上より、分子XとY及びその分子上のα2,6-Siaがメダカの心臓形成に重要であることが示唆された。 (3)RNA-seq法によるトランスクリプトーム解析: 本年度は野生型と変異体メダカに対して、RNA-seq法によるトランスクリプトーム解析を行い、遺伝子発現を網羅的に解析した。その結果、各欠損メダカにおける遺伝子の発現変動の違いが分かり、両者の表現型に関わる候補遺伝子を見出した。 (4)Sia結合様式を含めたグライコーム解析: 昨年度の計画通り、リール大学のYann Guerardel博士の指導の下、質量分析によるSia結合様式を含めたグライコーム解析に着手した。来年度も引き続き詳細な解析を行い、両者の糖鎖構造の違いを解析していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は昨年度に引き続きST6Gal I-及びII-KOメダカの表現型解析とα2,6-Sia担体タンパク質の同定について、更なる進展があった。昨年見出したメダカの孵化前段階における心臓の形態異常や拍動異常について、画像解析技術を駆使して、両者の心臓の異常を定量的に解析することに成功した。また、α2,6-Sia担体タンパク質の候補分子として分子Xの他に分子Yも同定することに成功した。これにより、分子XとY及びその分子上のα2,6-Siaがメダカの心臓形成に重要であることが初めて示唆された。また、本年度はRNA-seq法による網羅的な遺伝子発現解析及び質量分析によるSia結合様式を含めたグライコーム解析に着手できた。これにより、両者の表現型の詳細なメカニズム解明が期待できる。さらに、本年度は第94回日本生化学会大会において本研究の一部を発表し、若手優秀発表賞を受賞した。以上の内容を踏まえ、研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
ST6Gal I-及びII-KOメダカの表現型解析に関しては、画像解析技術を駆使しながら更なる表現型解析を行うとともに、レクチン染色やヘマトキシリン・エオシン染色による組織形態観察を行い、両者の表現型の違いをさらに明らかにしていく。また、同定したα2,6-Sia担体タンパク質に関しては、分子XとYのモルフォリノオリゴヌクレオチドを用いた遺伝子ノックダウンメダカを作出し、その表現型への影響を観察する。また、作製した分子XとYに対する抗体を用いて、免疫沈降実験や心臓における組織染色、さらに質量分析を用いたグライコプロテオミクス解析を行い、野生型及び変異体メダカにおける分子XとYの発現の違いやその上の糖鎖構造の違いを明らかにしていく。さらに、Siaの結合様式多様性の意義を解明するために、ST6Gal遺伝子部位に、α2,3-Sia転移酵素ST3Gal 遺伝子をノックインしたメダカを作出し、その表現型を解析する。
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