研究実績の概要 |
本年度は、以下の4項目について研究が遂行された。 (1)昨年度までに見出した、重篤な心臓異常を示すST6Gal Iのノックアウトメダカ (ST6Gal I-KO)胚にST6Gal IとII及びα2,3-シアル酸転移酵素ST3Gal I-Vを強制発現させた。その結果、ST6Gal I-KOメダカの心臓異常は ST6Gal Iだけでなく、ST6Gal II及びST3Gal IVの強制発現によりレスキューされることが初めて示された。 (2)昨年度までに心臓におけるα2,6結合シアル酸担体タンパク質としてMannose receptor C type 1 (MRC1)を同定した。本年度はその遺伝子ノックダウン (KD)メダカを作出し、ST6Gal I-KOメダカと同様の心臓の異常を示した。さらに、MRC1-KDメダカにおける全長またはN型糖鎖付加部位欠損MRC1 mRNAによるレスキュー実験を行い、メダカの心臓発生には、MRC1 上の特定部位のN型糖鎖が重要であることが分かった。 (3)遺伝子編集技術 CRISPR/Cas 9法を用いて、ガレクチン-3 (gal3)-KOメダカ及びST6Gal Iとgal3のダブルノックアウト (DKO) メダカを作出した。その結果、gal3-KO メダカ及びDKOメダカにおいては、ST6Gal I-KOメダカで見られた重篤な心臓異常は見られなかった。 (4)リール大学のYann Guerardel博士の指導の下、質量分析を用いた糖鎖構造解析を行い、受精後14日後の野生型とST6Gal II-KOメダカにおけるN型糖鎖構造を網羅的に同定することができた。また、レクチンマイクロアレイを用いて、孵化直後のST6Gal-KOメダカにおける糖鎖エピトープの網羅的な発現解析を行い、シアル酸だけでなく、様々な糖鎖構造が変異体間で変化していることを初めて示された。
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