令和4年度は、電析法により作製したNi基合金の構造解析並びに機械的性質の調査に取り組んだ。得られた研究成果は学会発表や学術雑誌にて発表した(※業績の詳細は「研究成果」の項目を参照)。代表的な研究成果として、学術論文に示した研究内容(電鋳剥離法により作製したNi-Co合金の微小硬度と引張強度特性)について以下で簡単に紹介する。 光沢剤としてサッカリンを含有する硫酸浴を用いて、電鋳・剥離法によりNi-Co合金薄板を作製した。電解浴組成や陰極電位などの電解条件を調整することで、合金中のCo含有率を28.8at.%~72.0at.%の幅広い組成領域で制御することに成功した。また、サッカリンを電解浴に添加することで合金薄板の結晶粒が微細化されており、X線回折装置(XRD)や透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた解析に基づくと、結晶粒径が30 nm程度まで減少していることが確認できた。また、走査型電子顕微鏡(SEM)観察や表面粗さ計を用いた測定によると、合金薄板は表面平滑性にも優れており、粗さを表すRa値は1.5 μm以下であった。さらに、ビッカース硬さ試験や引張試験機を用いた測定に基づくと、固溶強化と結晶粒微細化の相乗効果により、Ni-Co合金の機械的特性は等原子比付近で大きく向上することが見出された。本研究で作製したNi-Co合金薄板の微小硬度と引張強度特性はそれぞれ609 kgf/mm2および1757 MPaに達した。これは、溶融凝固法で作製されたNi-Co合金の引張強度値(約370 MPa)を大きく超越している。
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