研究実績の概要 |
今年度では、前年度樹立したp16陽性細胞を生体内で一細胞レベルで可視化可能なマウスモデルであるp16creERT2-tdTomatoマウス(p16-tomマウス)を用い、加齢状態や経時的な変化における生体内の老化細胞について研究を行った。具体的には、まず3,6,9,12,15,18,21,24カ月齢のマウスの様々な臓器をサンプリングし、切片を作製し解析を行った。その結果、腎臓、肝臓、肺、皮膚において、加齢に伴いp16陽性細胞の蓄積が観測された。特に、臓器によってp16陽性細胞の蓄積する月齢が異なっており、臓器の老化速度の違いに寄与しているのではないかと考えられる。 次に、老齢マウスの肝臓・腎臓・肺において、シングルセルRNA-seqを実施した。今回の解析では、p16陽性細胞と陰性細胞をtomatoの蛍光標識に基づきFACSにてソーティングし10xgenomicsを用いて行った。その結果、肝臓と肺では、p16陽性細胞では様々な細胞種において、複数の細胞種マーカーを持っている細胞が観測され、セルアイデンティティの喪失が示唆された。このような複数の細胞種マーカーを持つ細胞はp16陰性細胞では見られなかったことから、この現象が加齢にともなう臓器の機能異常を引き起こす要因の一部ではないかと考えられる。また、腎臓ではそのような現象は見られなかったが、興味深いことにアクアポリンを発現している細胞種においてp16陽性細胞の割合が高かった。以前に行った若齢マウスでは見られなかった現象であることから、加齢にともないアクアポリンを発現している細胞は特にp16陽性細胞になりやすいのではないかと考えられる。
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