研究課題/領域番号 |
20J21968
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
川村 英彰 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | ダイヤモンド / 炭素 / 同位体 / 深部流体 / 炭酸塩 / 川井型マルチアンビル / 高温高圧 / ステアリン酸 |
研究実績の概要 |
ダイヤモンドの起源と形成場の解明は,地球深部における炭素循環を解明する重要な糸口になると期待されるが,マントル深部由来のダイヤモンドの起源に関する統一的な見解は未だ得られていない.本研究では,地球深部においてダイヤモンドの形成と密接な関連があるとされる還元的な流体に着目し,より現実的な地球内部条件を再現した高温高圧実験を行うことで,マントル深部のダイヤモンド形成場周辺の鉱物および共存する流体の挙動を明らかにする.また,炭素同位体をトレーサーに用いて高温高圧実験を行うことで,ダイヤモンドの炭素源となり得る物質を探り,天然ダイヤモンドが多様な炭素同位体組成を示す原因の解明を目指す.最終的に一連の結果から,マントル深部におけるダイヤモンド形成環境のモデル化を行い,全マントル規模での炭素循環を明らかにすることを目標とする. 本年度は高温高圧実験で使用する還元的な流体の炭素同位体組成を測定することを目指し,高圧実験を実施した.本研究において流体源物質として使用しているステアリン酸は,高圧下における熱分解によって固体炭素とC-H-O流体を同時に生成する.そのうち固体側の炭素同位体組成をバルク分析することで,流体側の炭素同位体組成を間接的に推定することを試みた.また,炭酸塩と還元的な流体共存下でのダイヤモンド形成反応に伴われる炭素同位体分別効果を調査するための実験を並行しておおよそ完了した.今後回収試料の微小領域分析を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ステアリン酸の高圧下における熱分解によって生成した流体の同位体組成を,同時に生成した固体炭素側から間接的に見積もる試みは前例がなく,高圧実験後の試料の回収段階から手探りで実施した.回収された固体炭素の同位体分析の結果は,出発物質のステアリン酸の炭素同位体組成から±1.5‰程度の範囲に収束し,明瞭な温度・圧力依存性も確認されなかった.これは,間接的に見積もられる流体の炭素同位体組成が,今回行った実験条件の範囲内においてほぼ一定であるということを示唆するものである.一連の結果から,炭素同位体に着目した流体共存系での高圧実験において,ステアリン酸は有用な物質であることが示された.本年度は一定の成果をあげ,おおむね順調であったといえるが,前年度のやや遅れている状況から劇的に改善されるまでには至らなかったため,現在までの進捗状況をやや遅れていると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
炭酸塩と還元的な流体共存下でのダイヤモンド形成反応に伴われる炭素同位体分別効果を調査するための実験の大部分を本年度並行して実施したが,より詳細なデータを取得するために同様の実験を追加で実施予定である.また,イオン研磨加工装置を用いてそれらの実験回収試料の研磨断面を作成し,微小領域における同位体分析を実施する.さらに必要に応じて走査型電子顕微鏡・透過型電子顕微鏡を用いた過去の実験回収試料の微小領域分析を追加で行い,より詳細な反応メカニズムの解明を目指す.
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