研究課題
本研究は、日本の重要な金属鉱床の鉱石やその周辺岩石の化学組成および重元素同位体比(Pb, Os, Sr, Nd等)を分析することで、地球内部で生じる諸過程を考慮した熱水性金鉱床の包括的な成因モデルを構築することを目的としている。2020年度は、(1) 鹿児島地域、(2) 北海道・豊羽地域、(3) 岐阜県・神岡地域、(4) ニュージーランド沖ブラザーズ火山周辺域の4地域について、検討を行った。2020年度は、鹿児島県南部に位置する赤石および春日金鉱床の黄鉄鉱の化学組成データをまとめた論文1件を、鉱床学分野の国際誌Minerallium Depositaに発表した。この論文は、チリ大学との国際共同研究である。また、ニュージーランド沖ブラザーズ火山周辺域は、当初の研究予定には入っていなかったものの、日本の鉱床の形成環境に非常によく似ており、比較対象として重要であると判断したことから、研究を開始した。20試料について、化学組成およびOs同位体比分析の結果を海洋分野の国際誌に投稿した。そのほか、筆頭研究者として、岐阜県神岡鉱床および、北海道豊羽鉱床の成因に関する発表を2件の国際学会 (Mineral Deposit Group, PDAC)にて行った。
1: 当初の計画以上に進展している
2020年度は、(1) 鹿児島県南部に位置する赤石および春日金鉱床の黄鉄鉱の化学組成データをまとめた論文1件を、鉱床学分野の国際誌に発表した。この論文は、チリ大学との国際共同研究である。また、鹿児島県北部に位置する鉱床の鉱石および周辺岩石の試料を入手し、全25試料について、薄片観察を行い、鉱物同定と基礎的な岩石記載を行った。また、薄片作成や電子顕微鏡観察用の器具の購入を行い、所属機関における研究環境の整備を行った。(2) 北海道・豊羽地域については、周辺岩石13試料についてSr-Nd同位体比分析の前処理までを終了した。Sr-Nd同位体比分析の前処理は、千葉工業大学次世代海洋資源センターにて行った。また、先行研究のPb同位体データについて再解釈を行い、国際学会で2件の発表を行った。(3) 岐阜県・神岡地域について、鉱石20試料のOs同位体比分析を完了した。Os同位体比分析は、千葉工業大学次世代海洋資源センター内のマルチコレクター型誘導結合プラズマ質量分析計にて行った。また、Os同位体比分析の手法の改善に携わり、国際学会における発表につながった。(4) ニュージーランド沖ブラザーズ火山周辺域は、当初の研究予定には入っていなかったものの、日本の鉱床の形成環境に非常によく似ており、比較対象として重要であると判断したことから、研究を開始した。20試料について、化学組成およびOs同位体比分析の結果を海洋分野の国際誌に投稿した。
今後は、(1) 鹿児島地域の火成岩のの同位体比データ、および、(2) 北海道・豊羽地域、(3) 岐阜県・神岡地域の鉱石および周辺岩石の同位体比データについてもとりまとめを行う。これにより、研究成果をハイインパクトな国際誌に投稿することを目指す。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)
Mineralium Deposita
巻: 57 ページ: 129~145
10.1007/s00126-021-01053-4