研究課題/領域番号 |
20J22050
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉村 勇紀 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 星間化学 / 宇宙線 / 銀河形成 / 近傍銀河 / 爆発的星形成銀河 / 遠方銀河 / ALMA望遠鏡 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、ALMA望遠鏡による近傍銀河NGC253に対する無バイアス広帯域分光撮像サーベイALCHEMIのデータを用いて、星間分子の化学組成比から宇宙線イオン化度を推定し、銀河の他の物理的性質(アウトフロー、初期質量関数)関係を明らかにしようとするものである。また、NGC253で確立した手法を遠方サブミリ波銀河を含む様々な天体に応用する。
本年度はALCHEMIの近傍銀河NGC253の広帯域分光撮像データから、星間分子の化学組成比を見積もる際に基本となる水素分子の柱密度及びダスト粒子に関する物理量の分布を推定した。特にダスト粒子の物理量のうちemissivity βについては、従来研究より1桁高い分解能(約20pc)の分布図を得ることに成功し、論文化を進めている。
さらに本研究課題の具体的な応用対象のひとつである遠方サブミリ波銀河については、ALMA望遠鏡による大規模な遠方銀河探査プロジェクトALCSに参画する中で、三次元の観測データから輝線銀河を抽出する手法を適用し、赤方偏移6.1付近の[CII] 158μm輝線を検出した。前景の銀河団による重力レンズ効果により、宇宙再電離期における典型的な明るさの銀河よりも暗い銀河が増光されたものであることが判明し、そのような銀河種族の星間物質を調べるための「実験室」を手に入れた意義がある。本内容については、共著論文としてApJ誌から出版された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度中に分子化学組成比の推定まで完了する予定であったが、その手前の水素分子の柱密度の推定に留まった。また、研究代表者がPIとして採択されたNGC253に対するOH+/H2O+分子及びそのアウトフローの追観測については、世界的なコロナウィルス感染拡大の影響により、ALMA望遠鏡が観測を停止していたことで、実施されなかった。
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今後の研究の推進方策 |
まず、近日新しく導入した計算機によりALCHEMIデータの解析を促進し、分子化学組成比の推定および化学ネットワーク計算から得られたモデル値との比較を行う。またALMA望遠鏡による追観測については、ALMA望遠鏡が科学観測を再開することからデータ取得を目指すとともに、観測提案についても再提出を行う。また、コロナウィルス感染症の状況によるが、メキシコのLMT望遠鏡など他の望遠鏡にも赴き、現地運用の上、参考データの取得も行いたい。
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