ダフニフィラムアルカロイドはユズリハ属(Daphniphyllum)の植物から単離されたアルカロイドの総称である。その中には、一つの7員環に対し二つの5員環が縮環した[7-5-5]の三環性骨格を有した化合物群が存在し、これらに対する合成研究は盛んに行われてきた。しかし、14位炭素に不斉点を有し、9位炭素-10位炭素間に非共役二重結合をもつ[7-5-5]の三環性骨格を有した化合物群に着目すると、yuzurimineなどの化合物が数多く存在する一方で、現在までに合成された化合物はその一部のみである。そこで、私はyuzurimineなどの未だ合成されていない様々な化合物へと変換可能な三環性骨格の実用的な構築法を確立すべく研究を行った。 私はこれまでに電子環状反応と分子内求核付加反応を連続して行うカスケード反応行い、[7-5-5]の三環性骨格を有する化合物を合成した。2022年度は、含窒素骨格の構築を行った。まず窒素の導入を行うべく、メシラートに対するアジドの導入を検討したが、望みでない分子内反応が進行する結果となった。この問題は、分子内の反応点同士を架橋することで解決することができ、環状亜硫酸エステルに対するアジドの導入に成功した。Aza-Wittig反応とイミンの還元をワンポットにて行うことでピペリジン環の構築を行った。Claisen転位を行い、第四級炭素を構築した。その後、ダフニフィラムアルカロイドに存在するエステル部位を構築する際に、アミノ基の酸化等の副反応が進行することが明らかとなり、アミノ基を保護する必要があることがわかった。
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