研究実績の概要 |
水素含有窒化炭素膜(CNx:H)膜を用いた低摩擦システムの実現ならびに次世代水素潤滑技術への応用展開のために継続的超低摩擦界面形成メカニズムを解明することを目的とする本研究において,2年目である本年は,環境因子(酸素分子および水分子)と摩擦相手材料が継続的低摩擦挙動に及ぼす影響を実験的に明らかにするとともに,トライボ化学反応を分析した.主要な結果を以下に示す. 1.真空環境および窒素雰囲気環境(1~5000ppmO2, 0.01~10%RH)において,CNx:HはSi3N4, SiC, Al2O3, ZrO2を相手材としたいずれの場合も,相手材上にCNx:H初期構造から変化した構造を有する炭素層を形成し,摩擦係数0.05以下の低摩擦を発現する. 2.真空環境および相対的に低酸素濃度・低湿度域の窒素雰囲気環境(最低1ppmO2, 0.01%RH)では,CNx:Hは摩擦係数0.05以下の低摩擦を発現した後に摩擦が増加する「低摩擦寿命」を示す一方で,相手材ごとに上回ると低摩擦を50000サイクル以上持続する酸素濃度および相対湿度の臨界値が存在する. 3.窒素雰囲気環境において,Si3N4およびSiCを相手材とした場合よりAl2O3およびZrO2を相手材とした場合に,相対的に低い酸素濃度および相対湿度域で低摩擦を持続する傾向がある. 4.窒素雰囲気環境においてSi3N4/CNx:2Hが継続的低摩擦を発現する際,CNx:2H摩擦面では含有2Hの脱離および環境水分子由来のHの化学的結合が継続的に生じ,Si3N4摩擦面ではC層と共にSiC, SiO2等のトライボ化学反応層が形成される. 5.真空環境においてCNx/CNx:Hが継続的低摩擦を発現する際,炭素数1~4 (CH4, C2H4, C2H6, C3H6, C3H8, C4H10) の炭化水素ガスが定常的に発生する.
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