研究課題/領域番号 |
20J22256
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
増田 秀征 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 光コム / 絶対距離計測 / パルス干渉 / エタロン / ウォータガイドレーザ加工 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は構造物を高精度に三次元計測することである.これを実現するために光コムを用いている.これにより,高精度かつ長さ標準にトレーサブルな形での計測を実現できる.この光コムを用いたパルス干渉による測距について,エタロンの逓倍性を利用し,光コム繰り返し周波数と紐付けることにより実質的に高繰り返し周波数化し,測定範囲を拡大した絶対計測を行う手法を提案し,実験を通して検証した.その過程で,エタロン絶対長を高精度に絶対計測する手法を開発した.さらに,当該手法における特性を整理し,ハーモニックモード発振を利用した手法を提案している.このために非線形偏波回転を用いたオールファイバ光コム光源の設計・制作を行い, 励起強度や共振器分散の調整により,ハーモニックモード発振を確認した.電気光学変調器(EOM)の利用により,さらなる高周波化が期待でき,現在,これを組み込んだ光コムの開発に取り組んでいる. また,干渉計において,走査時に波長多重分割カプラを用いて,安定化He-Ne光源をファイバ上で光コムと同軸に導入する手法を提案しており,これによりメカニカルな誤差フリーな走査距離の追跡が可能になった. さらに,新しい研究プロジェクトとして前述の手法を応用したウォータガイドレーザ加工のインプロセス計測手法の開発に取り組んでいる.現在までに,ウォータガイド中に光コムを導入する計測概念の提案,水の吸収帯を避けるための光コム第二高調波発生系の構築,報告事例のない水中パルス干渉実験による提案手法の原理検証などに成功している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,全方向のレトロリフレクタとしての役割を持つボールレンズを基点とした測定網を用いて,構造物の三次元計測を行う.測定手法として,光コムパルス干渉による測距が提案されている.問題となるのは,一般的な光コムでは光パルス間隔が数m程度にとどまり,同様のオーダの走査範囲が必要になることである.これに対し,エタロンを利用して,実質的な繰り返し周波数を向上させる手法を提案し,ブロックゲージとの比較実験を通して評価し,十分な精度を持つことを確認した.さらに,異なるアプローチとして,光コムのハーモニックモード発振による繰り返し周波数をGHzオーダに高周波化することに取り組み,非線形偏波回転を用いたオールファイバ光コム光源の設計・制作を行い,ハーモニックモード発振を確認した. 一般にパルス干渉計では,一般的に干渉縞を取得するためにステージによる走査が必要となる.そこで,波長多重分割カプラを利用してファイバ上で安定化He-Ne光源を光コムに対して結合し,光コムビームと完全に同軸で変位計測を行うことにより,メカニカルな誤差のない走査距離の測定を実現した. 発展的な課題として,光コムパルス干渉による距離計測技術を利用して,ウォータガイドレーザ加工のインプロセス計測を行う.これは数十マイクロメートル径のジェット水流(ウォータガイド)中でレーザを全反射させ加工を行う手法である.提案手法では、光コム光源の第二高調波を加工レーザ同様、ウォータガイド中に導入して計測を行う. まず,水中での測定を行うためには水の吸収帯を避ける必要があるため,光コムの第二高調波発生(SHG)の系を製作した. 次に水中での測定可能性を検証するため,第二高調波を水中に導入,水中に配置したミラーによる反射光を検出し,パルス干渉を用いて計測を行い,十分な精度で測定が可能であることを確認した.
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今後の研究の推進方策 |
本年度においては,まず,電気光学変調器(EOM)を用いた光コムのモードフィルタリングについて取り組む.これは光コムの繰り返し周波数を数GHz 程度まで高周波化し,パルス干渉における干渉縞間隔を密にすることで測長可能な範囲を広げることが目的である.このために,製作した光コム共振器中に電気光学変調器を導入し,光コム基底繰り返し周波数の整数倍で変調することにより特定のモードを強く励起し,モードフィルタリングを行う.また,干渉計の改良についても引き続き取り組む.パルス干渉計では,一般的に干渉縞を取得するためにステージによる走査が必要となる.このために,波長多重分割カプラを利用して,ファイバ上で安定化He-Ne光源を光コムに対して結合し,光コムビームと完全に同軸で変位計測を行うことにより,メカニカルな誤差のない走査距離の測定を実現する.本年度においては,これを組み込んだ光学系について,詳細な精度をブロックゲージとの比較実験により検討する.さらに,ウォータガイドレーザ加工のインプロセス計測について取り組む.前年度までに,第二高調波化した光コムにより,水中でのパルス干渉による絶対距離計測が可能であることが確認できた.今年度においては,実際のウォータガイドレーザ加工機に光コムを導入し,計測可能性を検証する.このために,ウォータガイドレーザレーザへ組み込む光コムモジュールを開発し,反射光の解析を行うことにより提案手法の評価を行う.
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