昨年度は3本の論文を発表した。特に、"Cosmological free-free emission from dark matter halos in the ΛCDM model" (PhysRevD.106.063523) および"Cosmological contribution from population III stars in ultracompact minihalos" (PhysRevD. 106.083521) では、小スケールの原始ゆらぎを変化させた場合に宇宙の(大規模)構造がどのように変わるかを議論し、これによる観測量の対応を議論した。これらの予言と実際の宇宙論的観測結果を組み合わせることにより、小スケールの原始ゆらぎの大きさに対して、今までにない強い制限を設けることに成功した。原始ブラックホールのみに着目していた元々の研究実施計画とは少しズレてしまったが、最終的に小スケールの原始ゆらぎの性質の理解を飛躍的に推し進めることができた。また、"Primordial black holes and gravitational waves induced by exponential-tailed perturbations" (arXiv:2209.13891 [astro-ph.CO]) では、指数尾型の非ガウス性を持った原始曲率ゆらぎにより、原始ブラックホールが形成される際に付随して生成されるスカラー誘導型の重力波について、定量的な議論を行った。これらの研究成果について、昨年度中に3件の国内会議で発表した。その中で、「日本物理学会 2022 年秋季大会」での発表では、学生優秀発表賞を獲得した。
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