研究課題/領域番号 |
20J22307
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
清水 拓海 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 猛禽類 / ニッチ / 食性 / 繁殖 / DNAメタバーコーディング |
研究実績の概要 |
フクロウやタカなどの猛禽類は頂点捕食者として生態系に大きな影響を及ぼすだけでなく,生物多様性を象徴する存在として国際的に広く認知されている.環境アセスメント分野においても特に注目されているが,猛禽類の種間における相互作用は考慮されておらず,彼等が利用している餌資源も不明確な状態で環境影響評価が行われている.本研究では複数の猛禽類(オオタカ,ノスリ,トビ,トラフズク,フクロウ)を対象として,彼らが自然界においてどのように棲み分け,競争しているのかを明らかにすることを主な目的としている. 繁殖期にあたる4―7月に猛禽類が吐き出す未消化物「ペリット」をフィールドワークによって300サンプル程度採取した.それらの一部を対象にDNA抽出を行い,DNAデータベースを基に含まれている餌動物を網羅的に検出可能なDNAメタバーコーディング解析を実施したところ,従来の目視による解析手法では検出が困難だった小型の鳥類や魚類などを網羅的に検出した.具体的にはオオタカのペリットからは11種の鳥類,ノスリのペリットからは8種の鳥類,7種の哺乳類,3種の爬虫類,トビのペリットからは13種の鳥類,9種の哺乳類,2種の爬虫類,6種の魚類,トラフズクのペリットからは5種の鳥類,6種の哺乳類,フクロウの巣内残渣からは10種の鳥類,5種の哺乳類がそれぞれ検出された.本成果は日本生態学会において発表を行った.次に繁殖が終了した11月に再度調査地を訪れ,猛禽類の営巣環境に関するデータ(樹高,樹種,胸高直径など)の採取を行った.その結果,トラフズクは低く細い樹木を営巣木に多く選んでいたが,トビは高く太い樹木を営巣木に選んでいた傾向がみられた.今後はデータ数を増やすことで詳細な解析を行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスによる緊急事態宣言を受け,地方である調査地への訪問を可能な限り控えた結果,当初の予定ほどのフィールドワークが行えなかったため.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度もコロナウィルスによる影響は大きく,十分なフィールドワークは行えない可能性が高い.本研究の主な目的である猛禽類の種間におけるニッチ分化の解明に焦点を絞る予定である.大学の研究室で実験,解析が行える点からもペリットと営巣環境データの採取を集中的に行う.
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