研究課題/領域番号 |
20J22318
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
井倉 幹大 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 高速画像処理 / 適応的三次元形状計測 |
研究実績の概要 |
本年度は,飛行ロボットや移動ロボットなど,空間を高速に移動するロボットのための,高速空間センシングシステムの構築を行った.移動ロボットのためのセンシングシステムに関する研究は発展してきており,実現可能なセンシングの幅が広がっている.現在は複数のセンシングシステムを一つに統合することで,複数のセンシングタスクを実現している.しかし複数のシステムを統合することは,計算リソースや空間配置などの制約を受ける.そこで本研究では,移動ロボットの周囲環境に応じて,計測の時空間分解能と計測範囲を適応的に変更することができるシステムを提案した.提案システムは,一方ではロボットの全周囲計測,一方では局所領域に対して高時空間分解能で計測するというような両極端な複数の計測タスクを,1つの提案システムで実現できる.これによりロボットの動作に合わせた効率的なセンシング手法を一つのセンシングシステムで確立することができ,ロボットの制御手法の広げることができる. この提案システムの性能を評価するために,全方位高速カメラ,ダイレクトドライブモータ,ラインレーザを用いて適応的な高速空間センシングシステムを実際に構築した.このシステムを用いて,周囲環境の複数の計測対象との相対位置が変動する環境において,適応的に計測範囲が変更されることを確認する実験を行った.この実験で,全周囲計測,複数物体に対する高空間分解能計測,1つの物体に対する高時空間分解能計測,の複数の三次元形状計測タスクが適応的に切り替わることを確認した. このシステムに関する研究成果として,1本の学会発表,1本の論文誌査読中,1本の国際会議査読中,1本の国際会議論文受理の業績を有している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
博士課程の3つの研究テーマのうち,1つ目として,高速画像処理による適応的な高速空間センシングシステムを開発した.このテーマに関して,既に1本の学会発表,1本の論文誌査読中,1本の国際会議査読中,1本の国際会議論文受理の業績を有している.加えて,共同研究先での研究成果発表会にて,奨励賞を受賞した.査読結果に応じて対応を変える必要はあるが,このテーマの進度は十分であるといえる. 加えて,このテーマと並行して高速画像処理によるUAVとUGVの協調映像提示システムを提案した.遠隔操作可能なUAVとUGVの協調システムにおいて,UAVを用いてUGVで見えない領域の映像を,UGV視点に座標変換して重畳して提示することで,ユーザにわかりやすい映像を提供できる.この座標変換の際に,全方位高速カメラを用いて,UAVの位置姿勢変動が高速でもぶれなく提示することができる.実装は終盤であるので,研究成果の論文化を2年目からスムーズに行うことができる. 以上により,おおむね順調に進展していることが認められる.
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今後の研究の推進方策 |
今年度はまず,UAVとUGVの協調映像提示システムの開発,そして研究成果の論文化を行う.現在,UAVからの映像取得を市販のRGB-Dカメラを用いて行っているが,RGB-Dカメラに代わって,去年度提案した適応的な高速空間センシングを導入することを検討している.そのために加えて必要な高速カメラやレーザ,ダイレクトドライブモータを購入して新たな高速空間センシングシステムを開発する. 3つ目のテーマとして,イベントカメラを用いた高速空間センシングシステムを開発することを検討している.イベントカメラは環境光の変化にロバストで,移動によって輝度が変化してピクセルをイベントとして検出することができる.そのため,能動的にレーザを動かして三次元形状計測を行う提案システムに導入することは有効であると考えられる.そして,本年度は博士課程の研究の視野を広げるために,海外留学を検討している.留学先で,イベントカメラを用いた高速空間センシングに関する研究に従事する予定である.
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