研究課題/領域番号 |
20J22335
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高木 舜晟 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 発症予測 / 数理モデル / in silico / 成人T細胞白血病 / がん再発 |
研究実績の概要 |
成人T細胞白血病(ATL)は、HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)の感染者において発症する。発症者の割合は数%にとどまるものの、感染者数自体が国内だけでも約100万人に上ると言われており、発症した場合の予後は極めて悪いため、大きな問題となっている。予後を改善するためには発症を早期の段階で捕捉し治療介入することが望まれているが、ウイルスの潜伏期間は数十年単位にも及ぶため、発症前から発症後にかけてデータを追えている症例が極めて少ない、といった問題点から困難を極めている。そこで本研究では、HTLV-1感染者の体内の感染細胞動態を計算する多階層数理モデルを構築し、あらゆる病態進行パターンの再現データを取得した上で、早期発症予測に使用できる指標を開発するという新しい手法に取り組んでいる。 また、固形がんの患者に対して手術を実施した後の再発について、切除しなかった正常に見える細胞であってもある程度がんへの進行が進んでいる(すでに正常細胞とは異なる変異プロファイルを持っている)可能性があることに着目し、数理モデルを用いて再発の起こりやすい組織動態の特徴を見出した。この研究については、査読付き国際学術雑誌Frontiers in Oncologyに筆頭著者として論文を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度までに構築してきたATLへの病態進行を再現する数理モデルを用いた網羅的な解析により、特定の病型が出現する条件を明らかにしたほか、発症予測のための指標についても開発が進んでおり、最終年度での研究計画の遂行に向け滞りなく進んでいる。 また、固形がんの再発についても、多段階発がんに着目した数理モデルを開発・解析し、論文を発表するに至っており、数理モデルによってがんの進化動態を解明するという目的、計画は順調に遂行されていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までに開発してきた成人T細胞白血病の発症検出手法を用いて、実際に腫瘍悪性化の早期検出が可能であるかを検証する。臨床データはサンプル数が少ないため、まずは、成人T細胞白血病の進展を再現した数理モデルを用いて、あらゆる条件下を想定して検出力を確認する。そして、既存の指標であるOligoclonality indexでは検出可能であるか、そして本検出手法とどちらが精度、検出時期で優れているか、またその境界条件があれば特定する。その後、臨床データ(感染者のHTLV-1プロウイルス組込部位、ウイルス量)に対しても本手法を用いて効果を検証し、これらの成果を論文にまとめ国際誌に発表する。
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