研究課題/領域番号 |
20J22342
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
不動 愛理 近畿大学, 総合理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | プラズモニック光触媒 / 金ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
これまでに報告されているプラズモニック光触媒の多くは,化学的に高い安定性を示す金ナノ粒子を用いている.本研究では,金ナノ粒子よりも長波長域に光吸収を有するが大気下で容易に酸化される銅ナノ粒子を用いたプラズモニック光触媒の調製と,これを用いた近赤外領域における物質変換を目指す.遷移金属種で銅ナノ粒子を覆うことで銅プラズモニック光触媒を安定駆動させることが本課題の重要なポイントとなる. 【具体的内容】本課題において,重要となるシェル金属種の探索と修飾方法の検討を行った.当該年度は金ナノ粒子をコア金属とした,金コア-遷移金属種シェルを作製し,水の酸化反応に用いた.金属種と修飾量を検討した結果,クロム種を修飾した金コア-酸化クロム種シェル担持酸化チタンは金単独のサンプルと比較して約2倍の水の酸化活性を示した.この反応においてクロム種は,光照射時に金ナノ粒子上に生成した正孔を触媒表面に移動させる正孔移動助触媒として機能することがわかった.この知見は,プラズモニック光触媒における正孔の反応性の理解につながった. これらの研究成果を第126回触媒討論会や日本化学会第101春季年会において発表した.また,論文としてSustainable Energy & Fuelsに投稿し,現在査読中である. 【意義・重要性】金属ナノ粒子上に適切な遷移金属種シェルを形成することにより,酸化反応の活性が向上した.遷移金属種シェルの導入効果や修飾方法は,他のプラズモニック光触媒系にも応用できる知見となり,今後の本研究にも活かされると考える.この研究によって,触媒の調製法やその評価方法に対するノウハウを得ることができた.これらの結果・知見により,本研究課題にとって重要な可視光光触媒反応の研究における反応設計の指針が提供され,触媒機能の可能性が広がったと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は,プラズモニック光触媒における正孔の反応性の理解とその制御について集中的に探求し,①金ナノ粒子の表面にクロム酸化物種層を形成する手法の開拓,②金からクロム酸化物種への正孔移動の実験的証明,③クロム酸化物種の正孔移動作用による電荷分離の促進と光触媒活性の向上,に関する重要な知見と成果が得られた.この成果を各種学会にて報告し,日本化学会第101春季年会において,学生講演賞を受賞した.また,その成果をまとめた論文を学術雑誌に投稿する予定で,現在準備を進めている.シェル材料の選定や導入方法,触媒の評価方法に関する知見が得られ,これらは銅ナノ粒子をプラズモニック金属として用いた場合にも応用できるものである.以上の理由により,現在までの進捗状況を,(2)おおむね順調に進展している,と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
申請書に記載したように,銅ナノ粒子コアー遷移金属種シェル構造を有する光触媒材料の調製と,金属酸化物(酸化チタンや酸化タンタル)ナノバーの合成を行う.遷移金属種シェル材料の探索を行い,銅ナノ粒子の安定駆動が可能になれば,可視・赤外光照射下においてアルコールやグリセリン,アンモニアからの水素生成反応を検討する.金属酸化物ナノバーの合成については,溶媒や加熱時間などの合成条件を検討する. その後,金属酸化物ナノバーへ銅コア―遷移金属種シェルナノ粒子を修飾し,光触媒反応(水素生成や物質変換反応)を検討する.さらに,様々な単色光照射下において光触媒反応を行い,アクションスペクトルにより,駆動メカニズムを解明する.
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