研究課題
本研究では、未だに予後不良のMLL遺伝子再構成陽性乳児・小児急性リンパ芽球性白血病(MLL-r ALL)において、エピジェネティクス制御に基づいた新規治療法開発を目指し、新規BET阻害剤開発と新規治療法の提示を目的とする。本年度は、COVID-19の影響に伴い研究遂行が困難ではあったが、以下の2つの議題を実施した。①新規BET阻害剤のin vitro系における抗腫瘍効果の評価:BROMOscanにより同定された新規BET阻害剤のうち、MLL-r ALL細胞株に対して細胞増殖抑制効果を確認した候補化合物において、in vitro系における抗腫瘍効果の評価を実施した。この新規BET阻害剤は、BRD4かつCBP/p300阻害作用を有しており、MLL-r ALL細胞株に対し細胞周期の停止(G1 arrest)やアポトーシス誘導をもたらすことで抗腫瘍効果を示した。加えて、BRD4が制御する腫瘍関連遺伝子であるMYCの発現低下や、そのタンパク質発現低下を認めるとともに、アポトーシス関連タンパク質であるcleaved caspase-3やcleaved PARPの発現上昇が認められた。②MLL-r ALLにおける正所性担がんモデルマウスの作製とin vivo系における抗腫瘍効果の評価:In vivo Imaging Systemやフローサイトメトリー法を用いた経時的な解析を行うため、MLL-r ALL細胞株であるSEMにluciferase遺伝子やGFP遺伝子をレンチウイルスベクターにて導入し、SEM-Luc/GFP細胞を樹立した。正所性担がんモデルマウスは、SEM-Luc/GFP細胞をBALB/c Rag2-/-/Jak3-/-マウスに尾静脈移植することで作製した。このモデルマウスに新規BET阻害剤を経口投与した結果、治療群にて有意な生存期間の延長が認められた。
3: やや遅れている
本年度はCOVID-19の影響に伴い、十分な研究時間の確保が困難であった。本年度においては、新規BET阻害剤のin vitro系、in vivo系における抗腫瘍効果の評価が中心であり、これらの抗腫瘍効果とCBP/p300のゲノム異常との関連性について検討することが出来なかった。
本年度の結果を受け、下記の項目を継続して実施していく。①新規BET阻害剤のin vivo系における抗腫瘍効果・有害事象の評価:患者検体を用いたPDXモデルにおいての抗腫瘍効果の評価や、既存のBET阻害剤で問題となる有害事象について評価していく。②新規BET阻害剤における詳細な作用メカニズム解析③CBP/p300のゲノム異常解析と抗腫瘍効果の関連性の解明:固形腫瘍の細胞を評価系に加え、さらに解析を進めていく。
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