研究課題/領域番号 |
20J22451
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 拓哉 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
|
キーワード | 窒素固定 / 希釈培養法 / 黒潮 / 窒素循環 / nifH / 定量PCR |
研究実績の概要 |
コロナ禍で研究活動が大きく制限されたが、これまでに得られた調査試料の解析に加えて、複数回の調査航海に参加し黒潮域における窒素固定動態の時空間変化を明らかにするための貴重な試料、データの取得に成功した。さらにこれまでの解析結果の取りまとめを平行して進め、オホーツク海の窒素固定動態の結果は国際誌に受理され印刷公表、インド洋の結果については、国際学会での口頭発表を経て現在投稿論文としてして取りまとめの最終段階に至るなど、成果発信についても着実に成果を挙げている。 また、昨年度に解析を進めた黒潮域の分析結果から顕著な窒素固定の季節変動が見られた具体的には夏季に高く冬季に低くなるという変動だった。夏季に関しては表層硝酸塩が枯渇しているために窒素固定が重要な窒素供給源となることが確認された。また、一部の窒素固定生物の空間分布にはトップダウンコントロールが重要であるということを示唆する結果が得られた。一方、トップダウンコントロールがほとんど効いていない生物群も見られこれらの違いを引き起こす原因などを来年度の分析から明らかにする予定である。来年度は、速やかに分析を終了し成果の取りまとめ及び公表を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の最大の課題は、黒潮域の窒素固定動態の季節変動を捉えるためのサンプリングを行う事であった。当初はCOVID-19の影響が懸念されたが無事、4、9、11、1月の年4回にわたり黒潮域での調査を行うことができたため必要なサンプルを得ることができた。これらのサンプルは、窒素固定活性、窒素固定生物現存量、窒素固定生物死滅率を分析するための試料であり、現在のところ窒素固定活性については既に分析が終わっている。また、本年度は、北海道周辺の窒素固定活性と生物群集についての論文が国際誌(JGR:Oceans)に受理された。また、インド洋の窒素固定に関する研究も国際学会にて発表を行い、現在国際誌投稿に向けて準備中である。以上より、研究進捗および成果公表のいずれにおいてもおおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度は、前年度までに採取したサンプルの分析と成果発表が主な予定である。具体的には、年度前半(夏以前)までに全てのサンプル分析(定量PCRと検鏡)を終了し、動物プランクトン摂餌が窒素固定生物の分布に与える影響を定量的に明らかにすること。また、分析と並行して随時昨年度までに得た結果を国際誌に投稿するなど積極的に成果発表をしていく予定である。年度後半は、博士論文執筆と投稿論文執筆に集中し、海洋の窒素固定生物の分布を規定する要因の再検討を行う。
|