研究課題/領域番号 |
20J22456
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
東 拓也 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 金属配位子協働作用 / ヒドロボラン / 極性転換 / イリジウム / シクロペンタジエノン |
研究実績の概要 |
本年度において、当研究員はカルボニル化合物のボリル化を目的とし、シクロペンタジエノンイリジウム(I)ヒドリド錯体とヒドロボランの反応に試みた。B-H結合がB+とH-に分極していることを踏まえて、反応によりボロキシシクロペンタジエニルイリジウム(III)ヒドリド錯体を得られると期待した。しかしながら当初の予想に反して、反応後生成物はヒドロキシシクロペンタジエニルボリルイリジウム(III)錯体であった。この結果は、B-H結合を金属配位子協働作用により配位子上のH+と金属上の-へ切断する、新規極性転換反応が進行したことを示す。更に、本極性転換反応をアリルヨージドの触媒的ボリル化に応用した。本発見により、これまでホウ素求電子剤として用いられてきたヒドロボランをホウ素求核剤として用いることのできることが示された。今後さらなる有機合成化学分野への展開が期待される。本研究成果はAngew. Chem. Int. Ed.誌へ掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究開始当初は、ホウ素化合物の結合切断と続くボリル化反応という既知触媒反応の改善を目的としていた。しかしながら、合成した錯体とヒドロボランの反応により、当初予測しえなかったホウ素水素結合の極性転換反応を達成した。この反応は、合成した錯体に特異的なであることが示され、これまでの有機化学における常識を覆す結果であった。以上の理由より(1)当初の計画以上に進展している。と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、水素ホウ素結合の極性転換反応を更にカルボニル基への逆選択的ヒドロホウ素化へ応用する。水素ホウ素結合が水素アニオンとホウ素カチオンへ分極していることを考えると、一般にはカルボニル化合物とヒドロボランの反応ではアルコキシボランを与えると予想される。一方で本研究で開発した触媒を用いると、ヒドロボランをホウ素求核剤として用いることができるためヒドロキシアルキルボランが生成物として得られると期待する。
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