本年度の研究ではグラフ上の数値積分に取り組んだ。数値積分は科学技術計算および近年発展の著しいデータサイエンスにおいて必要不可欠なものである。そして、積分の対象となる関数もその応用先に合わせて非常に多岐にわたっている。近年発展の著しいデータサイエンス分野ではモノとモノを繋ぐネットワーク上の関数がよく現われる。そして、これらネットワーク上の関数に対するいくつかの問題はグラフ上の数値積分としてとらえられる。グラフ上の数値積分は近年注目され始めており、様々な研究がなされている。 本研究ではグラフ上の数値積分公式の構成及びその高精度化、高速化について取り組んだ。 昨年度まで取り組んでいたグラフ上の再生核Hilbert空間に基づく数値積分については、新たな知見を得ることができた。一方、再生核Hilbert空間に基づく手法のさらなる高性能化については上手くいっていない。 また、本年度はグラフ上の数値積分公式を構成する上での別のフレームワークである1-Wasserstein距離に基づく手法についても新たに研究を進めた。こちらの手法についても、1-Wasserstei距離に基づく誤差、およびテスト関数に対する誤差の意味で一定の性能を示す手法を新たに提案することができた。1-Wasserstein距離に基づく手法については、学会発表を1回行ったほか、当該研究内容をまとめた論文の投稿にむけ、現在準備を進めている。 また、本年度は当研究課題の最終年度にあたるため、研究内容の取りまとめを行った。
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