本年度の研究では、これまでに定式化した電子流体力学のフレームワークを活用することによって、量子幾何学的な輸送応答と表面プラズモンとの相関効果について詳しい解析を行った。より具体的には、プラズモン共鳴と周期プラズモニック構造に伴う近接場効果によって、量子非線形ホール効果が非常に広い周波数領域に渡って劇的に増強されることを理論的に明らかにした。この量子非線形ホール効果と呼ばれる現象は近年、次世代テラヘルツ波検出器やエネルギーハーベスティングなどへの産業応用が期待されており、本成果はこれらのアプリケーション開発に向けた重要な一歩となりうる。さらに、我々はより一般的な状況下において、Berry曲率双極子由来の光電流と光吸収エネルギーとの間に、ある種の普遍的な関係式が成り立つことを明らかにした。これにより、どのようなデバイス構造において非線形ホール電流が増強されるかが明らかになり、量子非線形ホール効果に基づく光電デバイスに対する明確な設計指針を与えることが可能となった。以上の成果は国際論文誌Physical Review B (Letter) にて出版済みである。今後は量子非線形ホール効果を応用した次世代テラヘルツ波検出器の開発に向けて、より現実的なプラズモニックアンテナ構造の理論提案に取り組んでいきたい。 また、昨年度から取り組んでいる「リザバー計算機」に関する研究では、新たにフィードバック型リカレントニューラルネットワークを用いた時系列予測に関する追加計算を行った。これらの成果は国際論文誌Physical Review E にて出版済みである。
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