研究課題
近年、低密度リポタンパク質(LDL)が、コレステロールや中性脂肪などの脂質のみならず、一部の脂溶性薬物においてもその運搬体として機能し、LDL受容体を介した薬物の組織移行に関わることが示された(Yamamoto et al., Sci Rep. 2017)。これを受けて、本研究では、LDL受容体を介して細胞内へ取り込まれた薬物の細胞内挙動・薬効強度を明らかにすること、脂質異常症治療薬の併用をはじめとする脂質代謝の変動が、薬物の体内動態及び薬効の強さに与える影響を明らかにすることを目的としている。令和4年度は、脂質代謝の変動が薬物動態に与える影響を明らかにするため、LDLに分布しやすい薬物と脂質異常症治療薬との併用試験を行った。野生型マウスを脂質異常症治療薬投与群と対照群に振り分け、1週間の事前投与後、両群に解析対象薬物(LDLに分布しやすい薬物)の飲水投与を開始した。4日目に血液を採取し、血清及びLDL分画を取得した。血清中脂質濃度、LDL分画中脂質濃度は、脂質異常症治療薬投与群において有意に減少し、脂質異常症治療薬による脂質代謝変動が確認された。次に、各試料中の解析対象薬物の濃度をLC-MS/MSにより測定したところ、脂質異常症治療薬投与群で血清中薬物濃度の顕著な低下が認められた。また、LDL分布率(LDL分画中薬物濃度/血清中薬物濃度)についても、脂質異常症治療薬投与群では対照群よりも有意に低下していた。本研究により、脂質異常症治療薬等によって引き起こされる脂質代謝の変動が、LDLに分布しやすい薬物の血清中濃度やLDL分布率を変動させることが示唆された。昨年度までに得られた、LDL分布型薬物と遊離型薬物の薬効強度に差が認められたin vitroでの結果をふまえると、血清中濃度の変動に加えて、LDL分布率の変動も薬効の強さに影響を与える可能性が考えられた。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Biomedicine and Pharmacotherapy
巻: 156 ページ: 113877~113877
10.1016/j.biopha.2022.113877