政治体制変動、とりわけ権威主義化の発生・進行要因の理論的研究について、さらなる理論の精緻化を中心に研究を進めた。具体的には、各国の憲法における指導者に対する制約の強さと、各国の指導者の経歴が当該国における民主主義の存続または権威主義化に与える影響について、データを収集し、計量分析と事例分析を組み合わせた分析を行った。 現段階の暫定的成果としては、以下の3点を明らかにした。 第1に、憲法において指導者の罷免の規定があったり、免責の規定がなかったりすると、当該国において指導者が自身の安全を求める誘因が高まり、権威主義化を進める傾向にある。 第2に、議会の選挙制度等が憲法に具体的に規定されていると、指導者は議会を思うがままに制御しづらくなるため、権威主義化の発生可能性は低下する。 第3に、指導者が過去に体制に対して政治制度外での抵抗を行った経歴を有する場合、当該指導者の政権下では権威主義化が進行しやすい。 上記の3点は、Varieties of Democracy (V-Dem)データセット等の政治体制に関する国際指標と、各国の憲法を比較したComparative Constitutions Project(CCP)のデータセット、および各国指導者の経歴を集めた独自のデータセットとを組み合わせて導き出したものである。これらの成果は国内学会・研究セミナー・国際学会等で口頭報告を行って他の研究者からフィードバックを受け、それらを元に理論を精緻化させた上で、今後さらなる検証を進めて論文を2024年度に投稿予定である。
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