研究課題/領域番号 |
20J22726
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小林 里瑳 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 土地所有 / 非集計モデル / 動的離散選択モデル / MCMCサンプリング |
研究実績の概要 |
本研究課題では,個人の土地取引を基にした動学的な都市の変容を通史的に解明する手法の提案と,解明の結果を援用した都市空間マネジメント手法の構築を目指す.具体的には,地主の異質性と動学的な意思決定を仮定した非集計モデルを構築し,土地台帳および不動産登記事項証明書を用いた土地取引履歴を入力データとしたパラメータ推定により,地主の意思決定を計量的に評価する.まず初めに地主の動的な土地所有形態選択に関する意思決定を解明することを目的に,非集計モデルの一つである動的離散選択モデルの枠組みでこれを定式化した.定式化したモデルは明治から戦後直後まで使用された土地台帳をデジタルデータ化したインプットデータを用いてパラメータ推定を行い,過去の土地所有形態に対する選択規範を明らかにした.この成果は都市計画学会で報告を行った.さらに,土地所有パターン選択の異質性に着目して,EMアルゴリズムとNFXPアルゴリズムを組み合わせた推定方法を適用して,潜在クラス別の土地所有パターンの規範を明らかにしたと同時に,状態サンプリングについても提案し,モデルフィッティングとパラメータの安定性の観点から検証を行った.サンプリングはMCMC法に基づいて行うとし,いくつかのデータセットではパラメータのばらつきが抑えられるということを確認した.そのEMアルゴリズムを導入しMCMCによる状態サンプリングを実施した成果については現在国際誌に向けて投稿準備中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
土地台帳を用いた動的な土地所有形態選択モデルについて,データの整備とモデルの構築を実施した.両者とも予定通り滞りなく遂行することができた.当初は単純なモデル推定を行うと予定していたが,モデル構築にあたって,選択肢集合の限定が必要であること,異質性が存在することが判明した.これを受けて新たに選択肢集合を限定する方法と状態サンプリングをMCMC法で行うことを検討し,さらにEMアルゴリズムとNFXP アルゴリズムを同時に推定するアルゴリズムを推定で実施した.
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今後の研究の推進方策 |
異質性を外生的に与え,土地の売却と土地の購入の両者を同時推定するモデルを提案する.土地の売却と購入をそれぞれデータ化にするにあたっては土地台帳のような古い資料ではなく,不動産登記全部事項証明書といった,最近の登記事項が記された資料が望ましい.従って,不動産登記全部事項証明書をモデル推定可能な形式に変換し,モデル推定に用いることを目指す.さらに最近の土地取引を扱うにあたっては交通行動との関わりについて考慮すべきである.交通行動の中でも特に回遊行動の一環である観光地における滞在行動に着目し,土地取引モデルと同時推定する手法について検討を予定している.
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