研究課題/領域番号 |
20J22727
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
濱野 誉 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | プラズマ照射 / 欠陥 / エネルギー準位 / トランジスタ / 3次元構造 |
研究実績の概要 |
本研究は,「確率的」プラズマ―材料原子スケール相互作用のモデリングを基盤として,材料やデバイスの長期的性能・信頼性をも最適化するプラズマプロセス設計手法を提案することを目指している.本年度は,(a)プラズマ照射によりシリコン(Si)系材料内に形成される欠陥準位の評価,(b)材料内の欠陥構造と外場の相互作用の解析 に取り組み,以下の知見を得た. (1)電圧ストレス印加後の過渡電流特性から絶縁膜中の欠陥エネルギー準位分布を推定する手法を提案した.本手法をSi系絶縁膜に適用した結果,プラズマ照射条件(プロセスガス種)に依存した欠陥準位分布が形成され,また実動作中の経時的な電気的ストレスによりその分布が時間変化することを明らかにした. (2)Si基板内の欠陥のエネルギー準位分布によって,MOS(金属―酸化膜―Si)構造の電気容量―電圧特性が大きく変化することを数値計算により予測した.様々なプロセスガス種(希ガス・反応性ガス)を用いた実験結果と比較することで,仮定したエネルギー準位分布の妥当性を確認した.またそれらの欠陥準位分布を考慮して,欠陥を含む微細MOSトランジスタにおけるデバイスパラメータ(閾値電圧,オフリーク電流)変動を予測した. (3)極性の異なるSi基板(n型,p型)を用いて欠陥の電気的極性を高感度に解析する相補的欠陥解析手法を提案した.欠陥準位分布に応じて基板極性を最適化することで,欠陥準位解析の感度向上が可能であることを明らかにし,超低密度欠陥の同定が求められる半導体デバイスに対する有効性を示した. (4)非接触,高感度な光学的欠陥解析手法である顕微フォトリフレクタンス分光法を用いて,代表的な3次元構造の1つであるSi深掘り孔底面および側壁表面の欠陥層形成を解析した.側壁における微量の欠陥準位形成を同定し,欠陥密度が開口部からの深さに依存することを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今後構築するプラズマ―材料相互作用・特性変化モデルの評価に必要となる,半導体,絶縁体材料に対する欠陥解析技術を開発した.またプラズマ照射条件最適化の際に重要な,欠陥を含む電子デバイスの特性変動予測シミュレーションを構築した.さらに次年度以降を見据えて,薄膜材料の電子状態予測についても併せて着手した.以上の事から,(2)おおむね順調に進展している.と自己評価した.
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今後の研究の推進方策 |
これまで蓄積してきた分子動力学計算,第一原理計算による予測結果を参考とし,プラズマ―材料間の物理的,電気的相互作用による欠陥形成機構について確率過程モデルを構築する.電気的・光学的欠陥解析手法を駆使して,構築したモデルの有効性を検証する.また欠陥構造と外場の相互作用を数理モデルにより記述し,高精度な信頼性寿命予測へ展開する.
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