研究課題/領域番号 |
20J22729
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研究機関 | 長浜バイオ大学 |
研究代表者 |
神林 千晶 長浜バイオ大学, バイオサイエンス研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 親種 / 核移行 / NUMT / 全ゲノム / 単為生殖 / インドメクラヘビ属 / Indotyphlops |
研究実績の概要 |
本研究では、異種間交雑によって生じた異質三倍体であるブラーミニメクラヘビについて、(1)親種の探索、(2)ミトコンドリアゲノム(ミトゲノム)の両性遺伝現象の実証、(3)本種の属するインドメクラヘビ属の分類学的再検討を目的としている。 (2)においては、本種に存在する2種類のミトゲノム様配列について(以下、既知ミトゲノムをタイプA、新規発見ミトゲノムをタイプBとする)、核に対するミトコンドリアの比率が組織ごとに異なることを利用し、異なる10組織由来のDNAを鋳型として定量的PCRを実施した。その結果、タイプAの存在量は器官ごとに変動が見られた一方で、タイプBは全ての器官で一定の増幅パターンを示した。このパターンは核シングルコピー遺伝子のものと酷似していたことから、タイプBはミトコンドリアには存在せず、核内に移行したNUMTである可能性が示唆された。続いて、ブラーミニメクラヘビの全ゲノム配列の解読を行った。得られたドラフトゲノムを解析すると、核DNA配列に隣接した、19 kbに及ぶmtDNA様配列が発見され、タイプBがNUMTであることを示す直接的な証拠が得られた。分子系統解析の結果、タイプAは既知のブラーミニメクラヘビのmtDNA配列とごく近縁になった一方で、タイプBは全く異なる未同定の南アジア産メクラヘビと単系統群を形成した。以上より、タイプBは異種間交雑時に導入された父方由来のNUMTである可能性が高いと考えられた。 (1)親種の探索と(3)分類学的再検討のためには南アジア地域でのサンプリングが必要であるが、前年度は新型コロナウイルスの影響で海外渡航ができず、遅れが見られている。次年度は、スリランカとバングラデシュからメクラヘビ類標本を輸送頂くことで研究を遂行する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(2)ミトゲノムの両性遺伝現象の実証については、手元の DNA サンプルや、インド産メクラヘビ類の配列データを送付頂くことで研究に取り組んでいる。これまでの研究により、タイプBが核に移行したNUMTであったことを明らかにした。得られた結果を統合すると、ブラーミニメクラヘビの父方系統においてミトゲノム全長の核移行が生じていたと考えられ、その後の異種間交雑によって、母方由来のミトゲノムと、父方系統のミトゲノムが核移行した染色体をもつ本種が起源したと考えられた。 一方で、(1)親種の探索や(3)分類学的研究を進めるためには南アジア地域でのメクラヘビ類のサンプリングが必須であるものの、新型コロナウイルスの影響で渡航ができておらず、研究にやや遅れが見られている。
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今後の研究の推進方策 |
(2)については、これまでに十分なデータが得られているため、次年度中に研究成果をまとめて論文として発表する。 (1)、(3)については、研究実施に必要となる海外渡航の難しい状況が続いていたため、スリランカの共同研究者からメクラヘビ標本を輸送頂いた。合わせてバングラデシュからもメクラヘビ類標本を提供頂く予定である。次年度はこれらのサンプルから分子・形態データを取得し、採用期間内に確実に成果を上げることができるよう研究を遂行する。
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