本研究課題「コンピテンシーを育成する形成的アセスメントの理論と実践」は、形成的アセスメントに関する論争について分析し、新しい形成的アセスメント論の可能性を理論的・実践的に模索するものである。最終年度である2022年度は、採用年度以来3年間に及んで進めてきた理論的研究や実践的研究の成果を統合して公表した。とりわけ、理論研究に関するものは、博士論文「学習評価論における「質的判断アプローチ」の展開 :ロイス・サドラーの所論に焦点を合わせて」として構造化した。現在、同博士論文を単著として出版する方向で、出版に関わる作業を進めている。他方、学校現場と共同で取り組んできたアクション・リサーチに関しては、「高等学校「物理基礎」におけるパフォーマンス評価実践の試み」と題される投稿論文としてその成果をまとめた。同論文(査読あり)は、日本科学教育学会が発刊する学術誌『科学教育研究』47-2号に掲載される。以上のような研究成果の公表に加えて、昨今、国際的に衆目を集めているミネルヴァ大学の教育実践に対してフィールドワークを行い、同大学の学習評価システムを調査した。同フィールドワークを通して得た研究成果に関しては、上述の理論研究の成果と関連づけながら学術的に整理して、2023年に書籍として出版する予定である。このように3年間の理論的・実践的研究の遂行により、本研究課題であった「新しい形成的アセスメント論」の一端を明らかにすることができた。
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