HSAB則に基づいたイオンペアメタセシスにより、ポルフィリンAu(III)錯体とメゾヒドロキシポルフィリンの脱プロトン体を組み合わせたペアを新たに合成し、電子供与性・求引性置換基の導入による機能発現および集合化を検討した。溶液中でカチオンとアニオンが近接した積層イオンペア(π-sip)の形成が、1H NMRから示唆され、カチオンの電子状態がπ-sipの安定性に影響することを見出した。また、π-sipのアニオンを光励起することにより電子移動が可能であり、イオンの電子状態に起因して過渡種であるラジカルペアの寿命を制御できることを見出した(Chem. Eur. J. 2023)。さらに、トルエン中の活性化したイオンペアは基底状態で電子移動が誘起され、ラジカルペアを形成することを明らかにした。このとき、凍結非極性溶媒中で生成した2種類のラジカルが近接積層し、スピン-スピン相互作用により温度に依存した電子スピン分布のスイッチングが可能であることを解明した(J. Am. Chem. Soc. 2022)。 トリアゾール環を有するアニオンレセプター(J. Org. Chem. 2022)やアニオン会合によりらせん構造を形成するアニオンレセプター(J. Porphyrins Phthalocyanine 2023)のクロライド会合体とポルフィリンAu(III)錯体のイオンペア形成を検討した。イオンペアの単結晶X線構造解析に成功し、π-sipを有したパッキング構造を明らかにした。さらに、Hirshfeld表面解析やEDA計算によりイオン間にはたらくiπ-iπ相互作用の詳細を明らかにした。 ソフトマテリアルへの展開をめざした新規アニオンの合成やチアポルフィリンカチオンを基盤としたイオンペア集合化(Chem. Commun. 2022)を検討した。
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