研究課題/領域番号 |
20J22775
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
ターン 有加里ジェシカ 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | ボランティアのジレンマ / 社会的ジレンマ / 協力 / 公平 |
研究実績の概要 |
ボランティアのジレンマ(集団内で少なくとも1人がコストを負担した場合に限って集団全体が利益を得られる状況)における人々の認知や行動に着目した研究を2つ行った。1つ目の研究では、ボランティアのジレンマにおける公平感の役割を検討するための実験を複数行った。その結果、公平を志向する程度に関する個人特性および過去の他者の行動が人々のコスト負担行動に影響を与えていることが明らかになった。この成果は2020年度に開催されたSociety for Personality and Social Psychology の学術大会で発表された。 2つ目の研究では、ボランティアのジレンマにおいてどのようなコスト分担が理想とされているのか、また現実にはどのようなコスト分担が起こるのかを検討した。その結果、人々は公平な結果を理想としているが、実際にボランティアのジレンマ状況に置かれると必ずしも公平な結果を実現できない可能性が示唆された。この成果は2021年度に開催される学術大会で発表される予定である。 さらに2020年度は、それ以前に行った研究の成果をまとめて、査読付き学術雑誌で論文を2本発表した。1本目はボランティアのジレンマにおける対人認知を検討したものであり、Asian Journal of Social Psychologyに掲載された。2本目はボランティアのジレンマと類似した状況において、人々が不公平を忌避する要因を対人認知研究の観点から検討したものであり、Letters on Evolutionary Behavioral Scienceに掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は新型コロナウイルスの影響で、人々を大学構内の実験室に招いて実験に参加してもらうということが難しくなった。そこで、本来は実験室で行う予定だった実験を、オンラインで行えるように体制を整え直した。その結果、当初の計画通りに2つの研究を実施することができた。 ボランティアのジレンマに関する2つの研究の結果、(1) 個人の公平感がコスト負担行動に影響していること、(2) 個人としては公平を志向していてもボランティアのジレンマという集団的状況では公平が実現するとは限らないことが明らかになった。これらの成果の一部は既に国際学会で発表された。また、これらの成果は査読付き学術雑誌に投稿するために論文としてまとめられている最中である。 以上のように、本研究は当初の計画に遅れることなく成果をあげており、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の研究から、個人としては公平な結果を理想としていても、実際にボランティアのジレンマという集団的状況に置かれると、公平な結果を実現できない可能性が示された。今後の研究では、この理想と現実の乖離が起こるメカニズムを明らかにするために調査や実験を行う予定である。
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