本研究の目的は、非線形光学効果により光ばねが強化されることを観測し、重力波信号増幅システムの原理検証を行うことである。昨年度までは光パラメトリック増幅という非線形光学効果を用いて信号増幅を行っていたが、光ばねの生成に必要となる強い共振器内強度のために光パラメトリック過程の維持が困難であることが明らかになった。そこで、本年度は主に光熱効果と光Kerr効果に関する実験を実施した。 光熱効果は強い光強度を用いる信号増幅システムにおいて光ばね定数の精密な測定を妨げる主な要因である。具体的には、光熱効果により光ばね定数の実部が虚部へと変換され、光による復元力が光による摩擦力へと変化する。光熱効果実験では、光熱効果の与える影響をモデリングすることで、オプトメカ振動子の感受率測定に基づく光熱パラメータの新たな推定法を開発した。また、光熱効果と光ばね定数を同時に推定することにより、測定結果から光熱効果の影響を実質的に除去する手法も確立した。 光Kerr効果は非線形光学効果の1つで、光強度に比例して実効的な屈折率が変化する現象である。入射光強度を強めるほど信号増幅効果も強くなるので、Kerr効果を用いることで光ばねの観測に必要な強い共振器内強度と信号増幅を両立することが可能である。実験的には、二次の非線形光学効果を連鎖的に引き起こすことで強いゲインを持つKerr効果を実現し、共振器内信号増幅効果を実装した。強いKerr効果により光熱効果の影響も増幅されたが、固定鏡を用いた測定に基づき光熱効果の影響を除去した。最終的に、Kerr効果による共振器内信号増幅効果により、光ばね定数が強化されることを確認することに成功した。
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