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2021 年度 実績報告書

アライン挿入分子数の精密制御による機能性π共役分子の新規合成法の開拓

研究課題

研究課題/領域番号 20J22816
研究機関広島大学

研究代表者

田中 英也  広島大学, 先進理工系科学研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2020-04-24 – 2023-03-31
キーワードアライン / ルイス酸性 / スズ / ホウ素 / 銅触媒
研究実績の概要

芳香環が連結した化合物は,医薬品・機能性材料・配位子などに頻出する重要骨格であり,本骨格構築のための新反応開発は意義深い.特に,アリール金属種に対するアライン挿入反応は芳香環連結と金属導入を一挙に行える優れた手法であり,1940年の初期報告以降,重要な研究分野となっている.しかし,従来の反応では高求核性有機金属種が必須であっただけでなく,異なるアラインの連続挿入は未踏であった.一方令和元年度,アリールスズのルイス酸性の強弱により鍵素反応であるスズ/銅トランスメタル化を制御することで,これら課題を解決した新たなアライン挿入反応の端緒を掴んだ(アラインの銅触媒アリールスタニル化).本研究では,求核性の低い有機金属種のルイス酸性評価・制御を基軸としたアライン挿入反応のさらなる展開・体系化を目的とする.令和3年度,以下の5つを中心に研究を推進した.
1.有機スズ・ホウ素の計算的FIA値によるルイス酸性の評価法を確立した.特に,Sn化学シフトとFIA値の間に見出した良好な直線関係から,FIA法がアリールスズのルイス酸性を予見する理論的手法として信頼に足ることを立証できた.
2.令和2年度にスズ近傍のヘテロ原子がスズ/銅トランスメタル化を促進する端緒を掴んでいた.令和3年度,これを応用したアラインの銅触媒ヘテロアリールスタニル化を進展させ,大幅な収率向上に成功した.
3.アラインの無触媒シアノスタニル化を進展させた.
4.アリールスタニル化を経由する環形成反応を進展させた.
5.アリールスタニル化で得られるアリールスズは,右田-小杉-Stilleカップリング(MKSC)により炭素骨格を伸長できる.2つのSnBu3を完全に見分ける,サイト選択的MKSCを開発した.これにより,OLED用配位子およびセロトニントランスポーター阻害効果を持つ分子群の分岐型短工程合成を達成した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

令和2年度から,計算的FIA値によるルイス酸性の評価法確立に着手してきた.令和3年度はこれを進展させ,FIAにおけるホウ素に関する原著論文,スズに関するプレプリントを発表した.特に,フッ素置換アリールスズにおいて,Sn化学シフトとFIA値の間に良好な直線関係を見出すことができた.これにより,FIA法がアリールスズのルイス酸性を予見する理論的手法として信頼に足ることを立証できた.このFIA法を利用することで,スズ/銅トランスメタル化は,以下の2つの場合に促進されることを明らかにした.1)スズのルイス酸性が高い,2)スズ近傍にヘテロ原子が存在する.計算化学による指標を基に,アラインの銅触媒ヘテロアリールスタニル化を進展させた.複数の基質が反応に利用できることを突き止め,塩基の選択により大幅な収率向上に成功した.アラインの無触媒シアノスタニル化においても,塩基の選択が反応系に大きな影響を与えることが判明した.アリールスタニル化をジスタニルアレーンに応用することで,環形成反応が進行する.令和3年度は本反応をジスタニルチオフェンへ拡張し,低収率ながら目的物が得られた.
MKSCはアリールスズの炭素骨格を伸長させる極めて重要な反応であるが,その反応制御の知見は不十分であった.そこで,MKSCの深い理解とともに化学選択的MKSCを開発できれば,アリールスタニル化と合わせてスズを用いた自在な炭素骨格構築が実現できる.FIA法により得られた反応性の原理を応用し,スズ/銅トランスメタル化において反応を完全制御するサイト選択的Pd/Cu共触媒MKSCを開発した.本反応は有機基の違いで2つのSnBu3を完全に見分けることができ,OLED用配位子およびセロトニントランスポーター阻害効果を持つ分子群の分岐型短工程合成を達成した.
以上より,本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した.

今後の研究の推進方策

令和4年度は,確立したFIA法によるルイス酸性評価を基軸に「サイト選択的Pd/Cu共触媒MKSC」を中心に研究を推進する.本反応は汎用性が高く,以降の研究遂行の鍵となるためである.特に,置換様式の異なる基質におけるサイト選択性の発現を見極める.同時に,「アラインの銅触媒ヘテロアリールスタニル化」,「アラインの無触媒カルボスタニル化」および「アリールスタニル化を経由する環形成反応」の研究を推進する.密接に関わり合うこれら一連の反応を俯瞰・体系化し,求核性の低い有機金属種のルイス酸性評価・制御を鍵とする新たなコンセプトの新反応群創出を目指す.

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2021 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) 備考 (3件)

  • [雑誌論文] Origins of Internal Regioselectivity in Copper-Catalyzed Borylation of Terminal Alkynes2021

    • 著者名/発表者名
      Takumi Tsushima, Hideya Tanaka, Kazuki Nakanishi, Masaaki Nakamoto, Hiroto Yoshida
    • 雑誌名

      ACS Catalysis

      巻: 11 ページ: 14381-14387

    • DOI

      10.1021/acscatal.1c04244

    • 査読あり
  • [学会発表] 末端アルキンの銅触媒ホウ素化における内部選択性の起源2021

    • 著者名/発表者名
      対馬拓海,田中英也,Rong Shang,中本真晃,吉田拡人
    • 学会等名
      第67回有機金属化学討論会
  • [学会発表] 末端アルキンの銅触媒ホウ素化における内部選択性の起源2021

    • 著者名/発表者名
      対馬拓海,田中英也,中西一貴,Rong Shang,中本真晃,吉田拡人
    • 学会等名
      第11回CSJ化学フェスタ2021
  • [備考] Migita-Kosugi-Stille Couplingに関するプレプリント

    • URL

      https://chemrxiv.org/engage/chemrxiv/article-details/60cc17f867d4910d8c9498e5

  • [備考] ホウ素化反応の常識を覆し分岐型アルケンの製造工程を大幅短縮

    • URL

      https://www.hiroshima-u.ac.jp/adse/news/67952

  • [備考] カップリング反応の選択肢増、広島大が技術 アルキン根元をホウ素化

    • URL

      https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00620351

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公開日: 2022-12-28  

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