研究課題/領域番号 |
20J22879
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
茂澄 倫也 富山大学, 大学院理工学教育部, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 超音波イメージング / 血管動態 / 信号解析 / 動脈硬化症 |
研究実績の概要 |
前年度の検討では、血流速度推定法に用いるパターンマッチング法に関して超音波画像の取得条件の違いによる精度評価を行った。また、生体に近い条件での評価システム構築のため、流体シミュレーションを検討し血管内を流れる血液を模擬した。 本年度は年次計画にしたがい、次に述べる2つの血管壁動態計測法を実装・検証した。まず、前年度の血流速度推定法により得られる流量値をもとに、血管弾性率に関わる指標である脈波伝搬速度(PWV: pulse wave velocity)の計測精度の改善を試みた。また、血管壁に加わる血流からの壁せん断応力を頸部血管の血液流速分布から推定する方法の実装を行った。 PWVについては、血管壁の径方向の変位波形を管内圧力波形と仮定して伝搬速度を推定する研究がなされている。本年度は血流速度推定法にて得られる流量をもとに、PWV推定を行うためのアルゴリズムを開発した。前年度の流体シミュレーションにより計算された血圧により壁の動きも数値解析的に模擬することで、評価を行うモデルを作成できた。このモデルを用いた評価実験により、脈波伝搬速度を2.7%の誤差で推定できることを示した。この成果は国内の学会にて発表した。 壁せん断応力の推定では、血管壁に加わる壁せん断応力(WSS: wall shear stress)を頸部血管の血液流速分布から推定する研究がなされている。しかし、超音波画像から推定されたWSSは空間分解能が低いため過小評価される。こうした過小評価を抑制するため、血流速度推定法による速度推定値に対し流体の流速分布モデルを当てはめる方法を開発した。前年度の流体シミュレーションに基づく評価実験により、流体の流速分布モデルを当てはめた場合、従来の手法に比べ過小評価がおよそ40%抑制されることを示した。上記の内容を国外の査読付き学会に応募しており審査中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
採択2年目当初は流体解析シミュレーションにより脈波伝搬速度(PWV: pulse wave velocity)推定精度評価用環境を構築すること、脈波波形の進行波を推定するフィルタを開発しPWVをより高精度に推定することを目標に掲げた。脈波進行波を推定するフィルタを開発し、構築したシミュレーション環境により評価を行ったところ、フィルタを適用した場合PWVの推定精度が従来法に比べ4.4%向上することを示した。これらの成果より、期待通り研究が進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では、ヒトの頸動脈の in vivo 計測を行うことで、血管壁動態計測法の生体計測への適用可能性を検証する予定である。脈波伝搬速度に関しては、前年度にシミュレーションで検討した内容をin vivo計測でも検証する予定である。 壁せん断応力(WSS: wall shear stress)の推定についても検討を行う予定である。前年度に検討したWomersley分布への近似精度をさらに向上させるため、最急降下法を用いて探索時間を短縮することで高次の項を実時間内に近似できるよう改善する。また、血流ベクトルを推定可能であることを利用し二次元的にWSSを推定するよう改善する。これにより、プラークを有するヒト頸動脈など複雑な形状をもつ血管におけるWSS推定を目標にする。これらを直管以外の管内を流れる流体シミュレーションにより定量的に検証した後、in vivo計測を行う予定である。
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