研究課題/領域番号 |
20J22890
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
田淵 雄大 電気通信大学, 情報理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | covalent binder / 加水分解触媒 / アミロイドβ / ユビキチン/プロテアソームシステム |
研究実績の概要 |
2020年度においては、モデル標的蛋白質及びモデルaptamerを用いて擬似ユビキチン作製の基礎検討を行った。 モデルとして結合構造情報が良く知られているthrombinとthrombin binding aptamer (TBA)とを選択し、擬似ユビキチンの開発を行った。まず、TBA配列内の特定残基にアルキニル長鎖アルカン (炭素数8) を持たせたものと、アジド基を有するアリールフッ化スルホニル (Ar-SO2F)とを、ヒュスゲン環化付加反応により結合させることで、TBAに標的蛋白質中のアミノ酸に対する共有結合特性を付与した。共有結合性TBAのthrombinに対する反応効率をゲル電気泳動 (SDS-PAGE) によって評価したところ、5’末端から数えて3残基目に修飾を行ったTBA (以下TBA3)において最も効果的な共有結合形成が確認された。さらに、ヒト血清中でTBA3とthrombinとを反応させ、蛍光分子で修飾された相補鎖を加えたのち、電気泳動/蛍光ゲルイメージングを行うことで、TBA3の標的特異性を確認した。その結果、あらゆるヒト血清蛋白質からは蛍光が見られず、TBA3-thrombin共有結合体のみが予想する分子量の位置に単一の蛍光バンドを示した。以上の結果から、aptamer配列中の適切な位置にAr-SO2Fを導入することで標的蛋白質に対してのみ特異的に共有結合を形成させることが可能であり、本手法により擬似ユビキチンの作製が可能であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に、標的蛋白質に特異的に共有結合を形成する擬似ユビキチンの作製手法の確立ができ、成果をChem. Commun.誌(2021; cover article)にて速報として発表したため「(2)おおむね順調に進展している」と区分した。 Aptamerは標的蛋白質の立体構造を認識して多面的に結合をすることが知られており、配列中に必ず標的蛋白質と近接する認識面を有している。また、本研究成果においてaptamerの標的蛋白質認識面にAr-SO2Fを導入することで、標的蛋白質に対して共有結合を形成することが明らかとなっている。そのため、標的蛋白質認識面を必ず有するaptamerにおいて本手法は一般的なものになり得ると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度においては、擬似ユビキチンにより標識された蛋白質を特異的に切断する擬似プロテアソームの作製を行う予定である。具体的には取得した擬似ユビキチンである共有結合性TBAの相補鎖配列中に、アミド結合を分解するcyclenを導入することで擬似プロテアソームの作製を行う。さらに、擬似ユビキチンにより標識したthrombinと擬似プロテアソームとを反応させた後、ゲル電気泳動及び蛋白質染色を行いthrombin-擬似UPS複合体バンドの減少率を確認することで、切断活性の評価を行う予定である。
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