研究課題
2021年度は主に以下の研究課題に取り組んだ。1) 大阪市の集合住宅における室内環境と居住者の適応行動の調査: 住宅における温熱環境と居住者の環境適応行動の実態把握を目的とし、大阪市の集合住宅で実測調査を継続した。本年度は居住者に活動量計の装着を依頼し、環境と温冷感、適応行動、活動量が紐づいたデータの収集を行った。居住者の個人属性や建築の断熱性能、居住者の行動を考慮した住宅の熱的快適域の考察を進めた。2) 窓や屋内植物が在室者の心理に与える影響に関する被験者実験: 2020年度に実施した研究の成果を英文の論文としてまとめた。本実験では窓の存在や屋内緑化が人間の心理や生理に与える影響を被験者実験により検証した。外部の自然を建築内に導入することが困難な都市部の建築を想定し、窓の設置や屋内緑化を計画した際の効果に関する知見を得ることを目的とした。在室者の空間の認知プロセスを視線計測により定量化し、心理申告との相関を分析した。3) 建築環境を模擬したグロースチャンバーでの観葉植物の生育実験: 建築環境を想定し、照明時間と光強度を変更したチャンバーで3種類の観葉植物を生育させ、成長量や光合成能力の差を分析した。植物と人間が共存する建築環境の計画法に関する知見を得ることを目的とした。実験は2021年6月に完了しており成果を取りまとめている。4) 視線計測を用いた観葉植物による認知機能改善効果の研究:植物などを設置した座席で、創造性とワーキングメモリを要求する2種類のタスクを行わせた際の被験者の眼球運動を計測し、植物による認知機能の改善効果との関係を考察する。実験は2021年12月に完了しており成果をとりまとめている。
2: おおむね順調に進展している
2021年度は、2020年度に実施した研究の成果が学術論文に掲載された。また、2021年度に実施を予定していた被験者実験や、グロースチャンバーを用いた植物の生育実験が完了し、論文として発表するためにデータを分析する段階に入った。複数の成果が雑誌掲載や学会発表を完了したことと、予定していた実験を無事に完了させたことから、「おむね順調に進展している」と自己点検による評価をした。一方で、2021年度までに収集したデータを採用期間の最終年度である2022年度までに発表するためには、スケジュールに十分な余裕があるとは言えない。そのため、「当初の計画以上に進展している」とはしなかった。2022年度はより多くの成果を発表することを目指し、引き続き地道に研究活動を継続する。
2022年度は主に以下の研究課題に取り組む。建築の形態や敷地などの文脈を考慮しつつ、在室者の快適性の向上に資する研究を進める。本年度は本研究課題の最終年度になるため、主にこれまでの研究成果の取りまとめと発表に注力する。1) 窓の有無や屋内植物の配置を変更した模擬執務室での被験者実験:窓の存在や屋内緑化が人間の心理反応や知的生産性に与える影響を、被験者実験で検証した。視線解析により、被験者の自然への接触を定量化することも試みた。2022年度は英文の査読付きジャーナルへの論文投稿を行う。2) 大阪市の集合住宅における室内環境および居住者の適応行動の調査:居住環境のデータと居住者の行動のデータを併せて収集することで、住宅における居住者の熱的快適域の分析を行う。窓開閉行動、空調方法や温冷感に関するアンケート、活動量の測定を実施している。居住者の属性や建築の断熱性能の違いが熱的快適域に与える影響も考察する。2022年度は日本建築学会大会や国際学会での成果発表を予定している。実測調査も継続する。3) 建築環境を模擬したグロースチャンバーでの観葉植物の生育実験:照明時間と光強度を変更したグロースチャンバーで、国内で流通する3種類の観葉植物を生育させ、光合成速度の測定や成長量の測定をした。2020年度に研究した波長別光環境を考慮した屋内植物の生育評価手法を、実際の建築に適用する際に参照可能な知見の獲得を目指した。2022年度は研究成果を海外の査読付きジャーナルへ投稿する。4) 視線計測を用いた観葉植物による認知機能改善効果の研究:植物などを設置した座席で、創造性とワーキングメモリを要求する2種類のタスクを行わせた際の被験者の眼球運動を計測し、植物による認知機能の改善効果との関係を考察する。2022年度は国内の査読付きジャーナルへ投稿することを目指す。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件)
Journal of Environmental Engineering (Transactions of AIJ)
巻: 87 ページ: 241~251
10.3130/aije.87.241
JAPAN ARCHITECTURAL REVIEW
巻: 4 ページ: 649-659
10.1002/2475-8876.12246