研究課題/領域番号 |
20J23128
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
金子 征太郎 電気通信大学, 情報理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 皮膚 / 触覚 / 質感 / インデックスマッチング / 計測 / 指紋 / 錯覚 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日常生活における幅広い触感の再現である。触感再現技術は、接触する物体の材質や表面特性を人に対して提示する事により、バーチャルリアリティ(VR)や遠隔コミュニケーションの臨場感を高める上で重要である。一方従来の提示装置では、点字などの記号的情報の提示にとどまっており、その原因として、凹凸が付与された面上での直接的な皮膚変形計測が行われて来なかったことがある。本年度は前年度までに作成された凹凸面上での直接的な皮膚変形計測を可能とする系を用い、波長の異なる一次元凹凸をなぞった際の皮膚変形を計測した。これによりなぞる対象物の形状が皮膚に対してどのように変換されるかが明らかになる。結果、凹凸波長が小さくなると皮膚はその凹凸形状の形を写し取らなくなり、より複雑な皮膚変形が発生することが明らかになった。このことは、凹凸波長が大きな触感を再現する際には空間的な皮膚変形刺激が必要である一方、波長が小さい触感再現においては、時空間双方の刺激を与える必要性を示唆している。これらの結果は国際学会IEEE Worldhaptics 2021に採択され、Honorable Mention: Best Work-in-Progress Paperを受賞した。 また、本課題に関連して、牽引力錯覚生起時の皮膚変形計測のプロジェクトにも取り組んだ。牽引力錯覚とは、刺激として振動を与えているにも関わらず外部からの力を知覚する現象である。本年度は、本現象が発生している際の皮膚変形計測を実施し、皮膚変形から触感覚が想起されるまでのメカニズムを明確化を試みた。結果、皮膚上での時間的な変動が錯覚に対して大きく寄与している可能性が示唆された。この成果は国内学会日本バーチャルリアリティ学会にて発表をおこない、学術奨励賞受賞につながった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究は、前年度までに開発された計測系を用いて実際のテクスチャ面上における計測を実施し、変形の特徴量を抽出することを目的としていた。研究の結果、凹凸面の波長に依存して皮膚変形が変化するパターンが観察され、特に凹凸波長が小さい場合にはその形状を写し取らず異なった変形が発生することを観察した。また、関連する課題として疑似力覚発生時の皮膚変形特徴を発見した。以上のことより本年度の研究計画に対して十分な成果を挙げることができたと考え、おおむね順調に研究が進呈していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はより複数のテクスチャ上での皮膚変形計測を継続するとともに、その特徴量の触覚ディスプレイ上における再現を開始する。これまでの研究により、単純な1次元凹凸面上における皮膚変形パターンが波長に依存して大きく変化することが観察された。このような変化が2次元的な凹凸面上においても同様に発現するかの確認を行う。また、木材などの形状を触れた際の変形が同様なパターンを示すかを検討し、その特徴量を抽出する。また、計測された変形特徴量を既存の触覚ディスプレイを組み合わせる事によって同様の感覚が再現されるかを検証する。
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