研究課題
本研究では、ファイトプラズマが分泌するエフェクタータンパク質によって昆虫の免疫反応が抑制されている可能性を考え、そのようなエフェクターの探索と機能解析を行うことを目的としている。本年度は、免疫抑制エフェクタータンパク質の機能解析のため、ヨコバイの虫体内注射系の確立を行なっている。加えて、昆虫媒介メカニズムの解明を行う上で基盤となる、媒介昆虫体内におけるファイトプラズマの局在・量的変動解析も行なった。これまでにファイトプラズマは媒介昆虫体内で増殖しながら消化管、血体腔、唾腺の順に通過することが分かっていたが、昆虫体内での経時的な動態はほとんど明らかになっていなかった。そこでタマネギ萎黄病ファイトプラズマ(onion yellows phytoplasma; 以下OY)とその媒介昆虫であるヒメフタテンヨコバイを用いて、ヨコバイ体内におけるファイトプラズマの経時的動態を解析した。まず、ヨコバイにOY感染植物を獲得吸汁させ、吸汁開始から41日後まで数日おきにヨコバイを回収して全身の切片を作成し、OY特異的な免疫組織化学染色を行なった。その結果、OYは吸汁14日後に消化管に局在し、20日後には血体腔と唾腺の一部にも局在するようになり、27日後以降は消化管と唾腺で多量の局在が観察されることが判明した。また、消化管、血体腔、唾腺におけるOYの蓄積量を定量PCRで解析した。その結果、消化管では7日後から21日後まで蓄積量が増加してプラトーに達した一方、血体腔および唾腺では21日後から28日後で顕著に増加し、消化管と同程度の蓄積量になった。以上の結果より、OYは感染初期の7から21日後は消化管で増殖し、感染後期の21日以降は血体腔と唾腺での蓄積量が増大することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、[研究実績の概要]の欄に述べた通り、免疫抑制エフェクター候補の機能解析に向けた虫体内注射系の確立を行なっていることや、昆虫体内におけるファイトプラズマの局在・量的変動を解明したことから、一定の進捗があったと考えている。
今後は虫体内注射による一過的発現系やノックダウン系を用いて、免疫抑制エフェクターの機能解明を目指す予定である。
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