研究課題/領域番号 |
20J23179
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
ガラムカリ 和 総合研究大学院大学, 複合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 情報幾何学 / テンソル分解 / 低ランク近似 |
研究実績の概要 |
統計物理学への展開や接続を見据えた,情報幾何学に基づく機械学習の理論的研究および実践的手法の構築を進めた.令和2年度は,行列やテンソルといった多次元配列を半順序集合を持つ標本集合とみなすことで,物理学で知られている平均場近似の適用を可能として,効率的に低ランク近似を行う手法の開発に成功した. 具体的には,多次元配列と同時分布を対応付け,低ランク条件が分布のパラメータでどのように記述できるかを整理し,この拘束条件を満たす部分空間への射影として低ランク近似を定式化した.部分空間の平坦性に関する議論により,この射影は凸最適化問題に帰着される.そのため,初期値に依らず大域的最適解が求まる低ランク近似アルゴリズムの開発が可能になった.更に,ランク1の部分空間では,多次元配列が独立分布の積で表示できることを示した.独立分布の積での近似は,多体問題を一体問題に帰着する平均場近似として知られている. 素朴な平均場近似の適用は行列のランク1近似に対応するが,双対平坦な座標系での制約をうまく設計することで,平均場近似の組み合わせによって,任意のランクで近似できる汎用的アルゴリズムの構築に成功した.合成データや実データを用いた実験によって,提案手法が既存手法と比較して高速であり,かつ同等かそれ以上の近似性能を持つことが分かった.行列やテンソルといった線形代数,確率分布の幾何を取り扱う情報幾何学,そして統計物理学と,異なる領域を繋げる研究成果である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
多次元配列の低ランク近似が物理学で良く知られた平均場近似として記述できるという我々の発見は,当初の計画では予期されていなかった.
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今後の研究の推進方策 |
報告者は既に,同時分布を独立分布の積からなる部分空間に射影する平均場近似としてランク1近似が捉えられることを指摘した.令和三年度は,同時分布を複数の同時分布の積で近似するベーテ近似と,テンソルの圧縮がどのような関係を有するかに注目する.ベーテ近似や平均場近似は物理学で広く活用される手法であり,こうした手法が知能情報処理分野にどのように活用できるかを検討する.
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