研究課題/領域番号 |
20J23214
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
竹重 龍一 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | レジリエンス / 熱帯降雨林 / 二次遷移 / リモートセンシング / 機械学習 / 森林劣化 / 森林伐採 |
研究実績の概要 |
令和3年度は、衛星リモートセンシングによる画像解析と海外での現地調査を予定していたが、新型コロナウィルスの流行に伴い調査が再延期となり、衛星リモートセンシングによる解析のみを実施することが出来た。 リモートセンシングによる解析としては、レジリエンス予測モデルにおいて重要なピースになると考えられる「後継樹の加入性」に関わるパラメータの算出、及び地上バイオマス回復予測モデルの構築に取り組んだ。後継樹の加入性に関わるパラメータを、当初の計画通り藤木ら (2016)で報告された手法を用いて調査対象地域の森林原生度地図を作成することで取得した。解析の結果、後継樹の加入性と森林回復速度との間に弱い関係性が認められたものの、使用した調査プロットの個数が少ないことも影響し、広域外挿可能な頑強なモデルを作成することはできなかった。当該の研究結果の一部は、6月に実施された第31回日本熱帯生態学会、3月に実施された第133回日本森林学会にて発表した。 また今年度は、レジリエンス予測モデルのもう一つの要である「遷移の初期状態」に関わる、密集性マント群落の空間分布についての論文を完成させ、国際誌に投稿した(査読中)。論文では機械学習を用いた衛星画像解析によって調査地の3割が密集性マントに被覆された森林であることを高い精度で示し、これまで十分に注目されてこなかった回復力を失った可能性の高い森林が、無視できないほど多く存在することを明らかにした。この結果は、国際機関による森林回復予想で多く用いられている素早い回復速度を基にした予測がボルネオ島の多くの森林で成り立たないことを示唆し、国際的な取り決めの見直しの必要性を提起している。当該の内容については、7月に実施された国際熱帯生物保全学会にて発表した。 更に、令和2年度・3年度の研究を総括した内容を、3月に行われた第69回日本生態学会のシンポジウムにて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
衛星リモートセンシング解析については、地上調査データの不足が原因で広域評価に適応可能なレジリエンス予測モデルを構築することが出来なかったが、予備解析を行ったことによって解析のフレームワークを確立させた点、及び傾向は弱いものの当初の仮説を支持する結果が得られた点において現地調査が実施できない状況下でも十分な前進が見られた。また研究成果の発表についても、令和2年度に行った研究内容を国際誌に投稿することができたこと、さらに令和3年度に行った研究についても投稿論文の準備が順調に進んでいることから概ね順調である。さらに、今年度は学会発表の機会にも多く恵まれ、特に国際学会での発表では、研究の重要性が広く認知され、多くの研究者と活発に議論を行うことが出来た。以上の状況を鑑み、現在までの研究の進捗状況は、概ね順調であるといえよう。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、本課題の最終年である。まずは、二年越しに海外調査に行くことが最優先事項となる。現在研究進行のボトルネックとなっている部分は、「後継樹の加入性」に関する評価の部分で、これについては現地で調査することが出来れば大きな進捗が見込まれる。次に重要になってくるのは、現地調査後のレジリエンス予測モデルの構築についてである。現地調査を順調に進めることが出来れば、多くの参照データを得ることが可能となり、それに伴って予備解析の際に用いた単純な解析ではなく、より高度な解析が可能になる。モデリング方法については、回復の非線形性を表現する手法をいくつか検討中であり、現地調査後速やかに手法間の比較・検討を行い、広域評価に用いる最終的なモデルを決定する予定である。 新型コロナウィルス感染拡大等の状況によって調査に出られない場合は、衛星画像解析をさらに進め、現在の密集性マント群落の分布を説明する要因について、「伐採履歴の空間構造」と関連付けた解析を進める予定である。
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