研究課題/領域番号 |
20J23225
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
白鳥 大毅 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | シンチレータ / ガラス / 放射線検出器 / シンチレーション / フォトルミネッセンス |
研究実績の概要 |
SiO2をベースとした重元素含有ガラス系に着目し、その放射線検出器材料としての可能性を調査した。昨年度はHfO2を母材レベルで含有する系について検討を行いSiO2との2元系ではいずれの場合もガラス化しないことが分かっている。上記組成ではAl2O3を導入することで一部組成においてガラス化するため、Al2O3がガラス形成上重要な役割を担っていることがわかった。そのため本年度の検討組成においてもAl2O3を導入することとし、HfO2をLu2O3に置き換えたLu2O3-Al2O3-SiO2系及びGd2O3-Lu2O3-Al2O3-SiO2系のガラスに関して、基礎光学特性及び放射線誘起蛍光特性を評価した。発光中心にはCeを選択した。また、Gdの導入にはエネルギー移動による発光効率向上の狙いがある。光学特性の評価の結果、両組成ともにCe3+の5d軌道準位から4f軌道準位への電子遷移に起因する発光を呈した。Gdを導入した系では、Gd3+からCe3+へのエネルギー移動による発光も確認できた。γ線及びα線照射によるパルス波高スペクトル測定の結果、発光量はLu2O3-Al2O3-SiO2においてはγ: ~300 ph/MeV、α: ~1700 ph/MeV程度であった。一方Gdを導入した場合、70%程度の改善が見られ、本系においてはGd3+及びCe3+間のエネルギー移動型発光が放射線照射時の発光出力を高める働きを持つことが示唆された。HfO2を含有した系ではγ線による発光量の算出ができなかったが、本系は発光量の算出可能レベルで発光することが分かり、重元素系ガラスシンチレータとして有望な系であると言える。しかしながら、本系では組成による発光への影響が大きく、最適化を行う余地がある。また、発光中心濃度も今後検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度組成からHfをLuへと置き換えたことにより、γ線照射下でのパルス波高スペクトル測定において光電吸収ピークを確認することができた。シンチレータの性能指標の一つに発光量の大きさがあるが、これは光電吸収による単位エネルギーあたりの放出光子数を意味しており、光電吸収ピークから算出することができる。ガラス材料ではγ線を用いたパルス波高スペクトル測定において光電吸収ピークが得られることは稀であり、光電吸収ピークが得られるか否かが第一の境界線となる。すなわち、本研究で得られた結果は当該ガラス(Lu2O3-Al2O3-SiO2系)がシンチレータとして有望であることを示唆するものである。また、Gdを添加することによって70%程度の発光量の上昇が認められ、シンチレーションにおいては発光効率の向上にエネルギー移動型発光が有効であることがわかった。さらに、前年度までの研究を通して、Lu系はHf系よりもγ線照射時の発光効率が高いことが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの結果を踏まえ、LuとHf、Siのそれぞれを複合した3元系組成の酸化物ガラスの作製を行う。まずはLu/Hf比を1として、ガラス化するシリカとの組成比を模索していく。ガラス化した組成に対してCe及びTbを発光中心として添加し、その基礎物性と発光特性の評価を行う。発光中心濃度の最適化により、最も特性の良い組成に対してはLa/Hf比によるエネルギー輸送効率や発光効率の変化についても検討を行い、ガラスシンチレータとしての最適な特性を有する組成を見出す。これらが十分円滑に遂行された場合、SiO2をより融点の高いAl2O3としたガラスに対しての検討を行う予定でいる。
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