研究課題/領域番号 |
20J23285
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
半沢 真帆 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 群れのまとまりの維持機構 / ギニアサバンナ / パタスモンキー |
研究実績の概要 |
令和3年5月から7月は、屋久島のニホンザルについて調査を実施し、群れの移動時のまとまりや目的地の決定に影響する要因について群間比較を行った。また、7月には第37回日本霊長類学会大会で、修士課程の研究課題であったニホンザルの群間エンカウンター時における個体の参加率についてポスター発表を行い、最優秀賞を受賞した。 その後、京都大学のガイドラインにより学生の海外渡航が可能となったため、9月から令和4年3月末までの約半年間、ガーナ・モレ国立公園のパタスモンキーについて初調査を行った。調査では群れの選定や人づけから始め、雨期終期から乾期における群れの遊動域や採食品目の変化、出産期にパタスモンキーで頻繁に見られるアロマザリング(乳母行動)について観察した。野生下のパタスモンキーについては、現在進行中の調査地はなく、本調査地であるギニアサバンナに生息するパタスモンキ―に関しては先行研究がないため、前述した基礎的なデータの価値は非常に高いことが見込まれる。 当初の研究課題であった群間関係については、他群の遊動域はおおよそ推定できたが、他群とのエンカウンター頻度が極めて少なく、データを蓄積するのが困難であった。そのため、追加の研究課題として、群れのまとまりを維持するメカニズムについて、本調査地のパタスモンキーで顕著に見られた周囲を見渡すモニタリング行動に着目し、その行動によって群れのまとまりが維持されているか、周辺個体数の変化や個体の空間的位置を記録することで検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年当初から始まった新型コロナウイルスの世界的感染拡大のため、外務省感染症危険情報レベルに準じた京都大学のガイドラインにより、学生の海外渡航が令和3年7月まで禁止となっており、その期間は本研究課題に関する調査を延期せざるを得なかったため。ガーナへの渡航禁止が解除されるまでは、研究計画の変更を余儀なくされたが、国内で進められる博士論文の課題となり得る研究を急遽計画し、令和3年の5~7月にかけて屋久島のニホンザルを対象に、群れのまとまりの維持や遊動時の目的地の決定に関わる要因について群間の比較調査を行った。その後、大学のガイドラインが緩和され、ガーナへの渡航の可能性が出てきたことを受け、現地の医療体制や入国時の水際対策措置等の情報を収集し、令和9月下旬から令和4年3月の間、渡航を果たし、初調査を実現させた。約1年半遅れて調査を開始したため、進捗状況には遅れが生じているが、初調査ではパタスモンキーの群れの人づけや個体識別を一から行い、群れの遊動域や食性、出産期など基礎的なデータを着実に収集した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究課題であった群間関係については、群間の出会いの頻度が極めて低く、他群が人慣れしていない理由から、データを蓄積するのが困難だと判断せざるを得なかった。そこで、当初の研究課題名に関連する代替的なテーマとして、遊動時における群れのまとまりを維持するメカニズムについて検証することにした。初調査期間の後半では、群れを追跡するなかで頻繁に観察された周囲を見渡すモニタリング行動に着目し、その行動が見られた時点と場所の可視性、また、その前後における周辺個体の頭数と移動方向を記録することで、モニタリング行動が群れのまとまりの維持のメカニズムとして機能している行動なのか検討した。現在、収集したデータを用いて、モニタリング行動が見られた前後の周辺個体数や個体の空間的位置の変化、また、環境の可視性によるモニタリング行動の頻度の違いについて分析中である。 今後は、分析結果をもとに予測を立て、次回の調査でさらにサンプルを増やし検証を進める予定である。 また、初調査では、直接的な群間交渉を観察することは出来なかったものの、他群の音声や姿を確認した時点と場所は記録したため、群間競合がどの程度起きているのか推定することは可能である。今後の調査では、他群と接近した際の土地の食物資源や、群内で見られた行動変化に着目し、高質な資源を巡った群間競合の可能性と、群内の発声頻度や群れのまとまりの変化について、他群に対する群内の協力性の観点から検討を試みる。
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