研究課題/領域番号 |
20J23299
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
麻生 啓文 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | HIV-1感染細胞 / scRNA-seq / 異質性 / インターフェロン誘導性遺伝子 |
研究実績の概要 |
ヒト免疫不全ウイルス1型 (HIV-1)の感染が原因である後天性免疫不全症候群 (エイズ)に対する抗ウイルス薬の開発が進み、エイズ発症の抑制は可能である。しかしながら、ウイルス排除による根治療法は未だ確立されていない。その理由の一つは、感染個体内においてHIV-1感染細胞が潜伏化するからである。これまでの一連の網羅的発現遺伝子の解析研究から、一部のHIV-1産生細胞はその後に潜伏化するなど、その感染様式が異なる細胞の集団であることがわかってきた。本研究では、HIV-1感染様式として「ウイルス産生」、「ウイルス抑制」、「死滅」、「潜伏感染」状態に至る細胞ごとに異なる運命決定の実態の解明、およびそれらの感染様式を規定する遺伝子群同定のためにバイオインフォマティクス解析を行い、ウイルス学的実験によってHIV-1産生細胞集団内に存在するその異質性を規定する分子メカニズムを実証することを目的とする。 本年度は、バイオインフォマティクス解析により判明した、細胞ごとに異なるHIV-1感染様式および運命決定を規定する遺伝子について、培養細胞を用いたウイルス学的実験により、ウイルス複製における機能解析をした。具体的には、当該遺伝子を過剰発現したCD4+ T細胞株、あるいはCRISPR/Cas9システムを用いて当該遺伝子をノックアウトした細胞を作出した。次に、それらの細胞におけるウイルス増殖能について、レポーターアッセイ、ELISA法、ウェスタンブロット法、フローサイトメトリー法などで解析して、各遺伝子がウイルス複製・増殖に与える影響を解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度に、HIV1-GFP感染ヒト化マウス由来のHIV-1産生細胞および非産生細胞のSingle-cell RNA-sequencing (scRNA-seq)のデータを用いて、「ウイルス産生」、「ウイルス抑制」、「死滅」状態の細胞ごとの細胞異質性を、バイオインフォマティクス解析により明らかにした。続いて、これらの異質性を規定する遺伝子として、ISG、細胞死関連遺伝子、およびその他の宿主遺伝子から、HIV-1産生量と正負に相関のある遺伝子を、バイオインフォマティクス解析で同定した。具体的には、HIV-1 RNA、ISG、細胞死関連遺伝子群、宿主遺伝子の各発現パターンによる細胞の分類間の相関性を機械学習的手法により解析し、異質性を規定する候補遺伝子を抽出した。 2021年度は、バイオインフォマティクス解析により判明した、細胞ごとに異なるHIV-1感染様式および運命決定を規定する遺伝子について、培養細胞を用いたウイルス学的実験により、ウイルス複製における機能解析をした。具体的には、当該遺伝子を過剰発現したCD4+ T細胞株、あるいはCRISPR/Cas9システムを用いて当該遺伝子をノックアウトした細胞を作出した。次に、それらの細胞におけるウイルス増殖能について、レポーターアッセイ、ELISA法、ウェスタンブロット法、フローサイトメトリー法などで解析して、各遺伝子がウイルス複製・増殖に与える影響を解析した。
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今後の研究の推進方策 |
バイオインフォマティクス解析により同定された細胞ごとの異質性を規定する遺伝子について、培養細胞を用いたウイルス学実験により、それらの遺伝子が、感染細胞の異質性に与える影響を実験的に解析する。具体的には、当該遺伝子を過剰発現したCD4+ T細胞株、あるいはCRISPR/Cas9シ ステムを用いて当該遺伝子をノックアウトした細胞を作出する。次に、それらの細胞におけるウイルス増殖について、レポーターアッセイ、ELISA法、ウェスタン ブロット法、フローサイトメトリー法などで解析することで、各遺伝子がウイルス複製・増殖に与える影響を解析する。
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