自然界で動物は他の生物を餌として摂食し、成長する。本研究では、共生微生物が栄養素の供給により宿主の成長において果たす役割の解明を目指した。キイロショウジョウバエは、自然界では子嚢菌酵母(以下、酵母とする)と細菌を主とする共生微生物によって発酵した果物を餌としている。微生物は果物だけでは不足する栄養成分の供給源として、幼虫の成長において必須の役割を担う。これまでに、野外でショウジョウバエが摂食する発酵餌(野外餌)の中に形成される微生物叢の構成が、発酵の進行に伴い変化することを見出した。また、野外餌から単離した微生物を無菌化処理した幼虫に与えることで、微生物叢中のどの種が宿主の成長を支えるための鍵となるかを明らかにした。当該年度には、鍵となる微生物種が果たす役割を理解するため、さらに詳細な解析を行った。まず、共生酵母については、栄養素の産生および幼虫への供給の機構を解明するため、RNA-seq 解析とメタボローム解析を実施した。その結果、特定の栄養素の供給量が、幼虫の成長を支えられる酵母種と支えられない酵母種との間で異なることがわかった。また、直接栄養素を供給しない種についても微生物叢中での役割を追究し、このような微生物が、栄養素を供給できる微生物種と幼虫の共生関係を長期に渡って維持するために重要な役割を果たすことを見出した。以上の成果をまとめた論文を現在執筆しており、近日中の投稿を予定している。
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