体内時計中枢である視交叉上核(SCN)は、神経回路レベルのネットワークを介して、頑強さと外部環境の変化に適応できる柔軟さを兼ね備えた概日リズムを創出している。しかし、SCNの神経回路構造に関する研究は、ほとんど進んでいない。そこで申請者は、SCNの局所神経回路および領域レベルのメゾスコピック投射についての解析を行うためのツール開発に取り組んだ。具体的には新規スパースラベリング法に加え、前年度より7種類の蛍光タンパク質を組み合わせて発現させ、神経細胞の色相から投射マッピングの多重解析を可能にする「蛍光バーコードベクター」の開発に着手した。 前年度までに、AAVの作成を行い、各蛍光タンパク質のシグナルAll-or-Noneで分離されていることを確認していた。本年度は蛍光バーコードを発現するAAVを用いて、まずは大脳皮質にて蛍光バーコードベクターを発現させ、共焦点顕微鏡を用いて撮像を行った。その結果、視床や線条体などの皮質下領域、橋核において、鮮明なトポグラフィが確認された。次に、機械学習を用いて軸索の形態や色相からどの蛍光バーコードを自動同定するプログラムの作成を行った。その結果、錐体路のような複数領域からの投射が密集する場所においても、それぞれの軸索を抽出し、バーコードを識別することが可能であった。これにより、領域間投射を多重解析するためのパイプラインを構築することができた。
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