研究課題/領域番号 |
20J23407
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 滉二 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
|
キーワード | 炭化珪素 / 電界効果トランジスタ / 散乱機構 / 界面準位 / 窒化処理 / リン処理 |
研究実績の概要 |
先行研究において、Hall効果測定による可動電子移動度の定量が行われているが、界面準位密度の高い酸化・窒化試料を評価の対象としてきた。そこで、本研究では、界面準位密度を極限に低減することができるリン処理を施した試料について、電気的特性の評価を行ってきた。
前年度の研究では、リン処理を施したSiC MOSFETの実効移動度を中心に評価しており、Hall効果測定は少数の試料に限定して行っていた。しかし、より厳密で詳細な議論を試みるためには、様々なボディ層濃度を有するSiC MOSFETを複数のゲート酸化膜形成条件で作製し、多数の試料に対してHall効果測定を実施する必要がある。
当該年度では、ボディ層濃度を3×10^14 cm^-3から3×10^18 cm^-3までの広い範囲で系統的に変化させて、酸化、窒化、およびリン処理を施したSiC MOSFETを作製し、室温でHall効果測定を行った。その結果、リン処理を施したSiC MOSFETは、他のゲート酸化膜形成条件の試料と比べて、捕獲電子密度がおよそ1/10と非常に小さいことが判明した。また、いずれのボディ層濃度を有する試料においても、酸化・窒化試料より高いHall移動度が得られた。さらに、実効垂直電界が高い領域において、窒化試料のHall効果測定で報告されていたHall移動度の急激な低下が、リン処理を施した試料の場合、比較的緩やかになっていることも確認できた。これらの現象が観測できたのは、リン処理によって、クーロン散乱源である捕獲電子の密度が十分に低減できているためであると考えられる。本成果は、SiC MOSFETにおいて、今後より高いチャネル移動度を実現するために重要な知見になると期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度では、リン処理を施したSiC MOSFETについて、ボディ層濃度を系統的に変化させて作製した素子のHall移動度を議論し、界面準位密度の違いが散乱機構に及ぼす影響に関する知見を得ることができた。Hall移動度が界面処理法に依存しうることを明らかにしたという点で、散乱機構の解明に向けて十分な進展があったと言える。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、温度を変えてHall効果測定を実施する予定である。まず、高温においてHall効果測定を行うことで、フォノン散乱を中心とした議論を行う。続いて、フォノン散乱を抑制できる低温においても測定を行い、クーロン散乱や表面ラフネス散乱について詳細な解析を行う。
|