本年度では、リッジ導波路擬似位相整合(QPM)素子を用いた可視-赤外域量子もつれ光子対の高効率かつ広帯域発生と評価の研究を行った。量子赤外吸収分光測定において、もつれ光子対源の大光量化や広帯域化を行うことで、より高速で高感度な測定の実現が期待される。そこで本研究では、光の強い閉じ込め効果により、もつれ光子対の高い生成効率が期待されるリッジ導波路型QPM素子に着目した。また、素子の分極反転周期を変調(チャープ)することで、広帯域にもつれあった光子対を一度に生成することができる。本研究ではまず、ノンチャープリッジ導波路型QPM素子に対して、可視-赤外域量子もつれ光子対の発生と同時計数計測による評価を行った。その結果、得られた同時計数計測の値からデバイスでの単位パワーあたりの発生光子数は、ノンチャープバルク型QPM素子の600倍以上であることを確認した。また、次にチャープリッジ導波路型QPM素子に対して可視-赤外域量子もつれ光子対の発生と評価を行った。まず、可視光子のスペクトル観測結果から、中赤外2-5 μm域に対応する可視光子の超広帯域生成を確認した。また、発生した可視光子に対して単一光子検出を行い、チャープバルク型QPM素子に対して500倍以上の発生レートを確認した。さらに、発生した赤外光子に対してInSb赤外検出器によるロックイン検出を行い、赤外光子の広帯域発生を直接確認した。これらの結果からリッジ導波路型QPM素子を用いた可視-赤外域量子もつれ光子対の高効率かつ広帯域生成を実証した。本研究成果については、2022年9月にハイブリッド開催された国内学会の応用物理学会で口頭発表を行い、成果内容を論文にまとめて学術雑誌に投稿準備中である。
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