本年度は発光波長の長波長化に着目した.前年度に引き続きSi基板上のSiO2膜にナノスケール開口部を作製した加工基板による実験とBiを添加した新材料ナノワイヤについての実験も行った.具体的に行ったことは以下の通りである. ①昨年度作製した,加工基板上のGaNAsナノワイヤの詳細な構造分析を行った.その結果,ナノワイヤにみられる六角形構造とシェルの形成が確認できた.さらに,昨年報告した「Polytypism in GaAs/GaNAs core-shell nanowires」と同様に,ウルツ鋼構造の減少の再現性が確認できた. ②Biを添加したGaNAsBiシェルを持つナノワイヤ成長を行った.その結果,室温で1350nmまでの長波長化に成功した.GaNAsで使用した温度ではBiが導入されないことが確認された.GaNAsBi層で低温成長を行うことによりBiが導入され,発光波長が長波長化した.また,Biを導入した時にこれまで起こっていた表面の乱れも確認された.Nのみでは1080nmまでの長波長化しかできなかったが,Biを加えることで大幅な長波長化に成功した. ③前年度 Nのみを導入した試料を作製したため,本年度は加工基板上にInを添加したGaAs/GaInNAs/GaAsコア-シェルナノワイヤの成長を行った.また,成長レートを昨年度の1/3に設定し,より低レートでの成長を試みた.その結果,一部パターンにおいて,成長方向が一定で,パターン通りにナノワイヤが成長した.Inを添加したことによる長波長化が確認され,その発光波長は室温で最長1270nmであった.その発光強度は昨年の3倍となった.In添加時にみられた構造の乱れは,シェル成長時にAs供給量を増加させることで確認されなかった.昨年度よりも長波長化に成功し,1300nm帯のGaInNAsナノワイヤを実現した.
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