研究課題/領域番号 |
20J23448
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
峯岸 雄基 埼玉県立大学, 保健医療福祉学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 末梢神経損傷 / 運動介入 / 運動機能回復 / 軸索再生 / 坐骨神経圧挫モデル |
研究実績の概要 |
末梢神経損傷後は中枢神経系で神経回路の再編が生じ、運動機能回復を阻害する要因となる。本研究は、末梢神経損傷後の機能回復を促進する運動療法発展のため、末梢神経損傷後に生じる中枢神経回路の可塑的変化と機能回復を促進する機序の解明を目的とする。まず2020年度では、Sprague-Dawley系雌性ラットを対象に、どのような運動プロトコルが損傷軸索再生や運動機能回復を最も促進するのかを検証した。その結果、インターバル運動が連続運動に比べ、軸索再生率や運動機能回復が高値となった。この運動特異的な軸索再生促進の分子メカニズムは不明な点が多く残されている。近年、末梢神経損傷後に非ミエリン形成シュワン細胞で発現するTransient Receptor Potential Vanilloid 4(TRPV4)が、損傷部位より遠位神経の脱髄を促進することが報告され、末梢神経損傷後の運動介入がTRPV4活性化に及ぼす影響を組織学的および分子生物学的解析により検討した。坐骨神経損傷後5日時点をピークとして、TRPV4活性化が組織学的に観察された。このTRPV4活性化は非運動群で7日後まで持続したが、運動群は非運動群よりも活性が低かった。以上のことから、神経損傷後の運動介入は、機械受容チャネルであるTRPV4を活性化し、遠位神経の脱髄を促進することで軸索再生促進と機能回復に寄与した可能性がある。なお、現在、Western blotting法による発現バンドの解析を行なっており、神経栄養因子の発現動態と併せて翌年度に考察を行なっていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う所属機関の研究活動の制限により、当該年度における全体的な研究進捗状況が当初の計画から遅延した。また、Western blotting法の手法取得に、当初の計画以上の予備実験を要したことも進捗が遅れた要因である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は研究1と研究2を実施する。まず研究1では運動特異的な軸索再生促進の分子メカニズ ムの検討は未実施であり、2020年度に引き続き実施していく。次に研究2では、異なる脱神経期間の坐骨神経軸索断裂モデルを用いて、末梢神経損傷後の脱神経期間の違いが脊髄神経回路の可塑的変化に及ぼす影響、および運動療法による可塑的変化と機能回復を促進する機序を明らかにしていく。本研究に必要な解析手法である神経伝導検査の計測システム構築、および逆行性神経トレーサーを用いた運動ニューロン標識の手法習得と適した試薬の選定は2020年度に実施済みである。実験デザインは、「可塑性がより有効に働くモデルである」坐骨神経を1回圧挫するSC群と、1週ごとに坐骨神経を圧挫し脱神経期間を延長することで「可塑性が働きにくいモデル」であるSMC群を作製し、それぞれに運動群を設けることで、脊髄神経回路の可塑的変化を促進/阻害する分子メカニズムを明らかにし、運動機能回復との関連性を検証していく。目的のタンパク質に関しては先行研究の文献調査や予備実験を通して決定していく。組織採取および神経伝導検査計測 のタイムポイントはモデル作製後2週、4週、8週、12週時点とし、運動機能評価はモデル作製後に1週ごとに評価していく。
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