研究課題/領域番号 |
20J23471
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
中島 壽視 福井県立大学, 生物資源学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 地下水 / 河川下流域 / ラドン / 栄養塩 / 植物プランクトン |
研究実績の概要 |
①河川下流域における水と栄養塩の動態評価:河川下流域で生じる地下水-表流水交流が海域への水・物質輸送へ及ぼす影響を調べるために、2021年7・8月の期間に、若狭湾へ流出する6河川の下流域を対象として調査を実施した。6つの河川下流域において地下水が流入しており、正味海域へ輸送される水、窒素、リンの量のそれぞれ約1~15%、約1~17%、約1~27%を占めていた。また、河川下流域の勾配が大きい河川ほど海域への表流水輸送量に対する地下水の寄与率が大きい関係性を示した。河川下流域における地下水流入は栄養塩動態において重要な要素であり、沿岸域の生物生産にも影響しうることが示唆された。 ②陸水(河川水および地下水)による低次生態系への影響評価:地下水による栄養塩輸送が低次生態系へ影響しうるのかを評価するために、2020年6月と11月に三陸沿岸に位置する内湾の一つである舞根湾の表層海水を採取し、栄養塩や陸水(再循環性地下水、淡水性地下水、河川水)を添加・培養し、培養前後でのクロロフィルa濃度を比較した。窒素添加区では対象区(無添加)に対して有意に高いChl-a濃度を示し、窒素負荷によって植物プランクトンの増殖が活発化することが示唆された。また、陸水の添加区においても対象区に対して有意に高いChl-a濃度を示す結果が得られた。湾外からの栄養塩流入が卓越する舞根湾に、湾外水と比べて窒素を多く含む陸水が追加的に負荷されることで、舞根湾の高い一次生産性が維持されていることが示唆された。 ③追加解析+論文執筆:本研究課題に関わる、修士課程の成果を追加で解析し、国際誌へ投稿した。三陸沿岸に位置する内湾の一つである舞根湾では、一度地下へ侵入した海水が再び流出する経路(再循環性地下水)による栄養塩輸送が河川水による栄養塩輸送量よりも多く、栄養塩収支でも重要な栄養塩供給源となっていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度初めは新型コロナウイルス感染症の拡大により、予定していたフィールドでの観測は変更を余儀なくされた。その一方で、外出制限に伴う在宅ワーク期間にこれまで得られていた成果の解析や投稿準備を大幅に進め、投稿まで行うことができた。また、同期間に計画の見直しや先行研究の収集などを行うとともに、外出制限が緩和されたタイミングで集中的に調査を実施し、必要最低限のデータを得ることができた。結果として学会発表や論文投稿に向けた成果のまとめを進めることができているため。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症の状況によって、フィールド調査等の予定はその都度見直す必要があるものの、予定しているフィールド調査(小浜湾・気仙沼舞根湾)を実施し、本研究課題の達成に向けたデータの取得を第一に努める。また、本年度に得られた成果を論文として発表できるよう作業を進める。
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