研究課題/領域番号 |
20J23471
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
中島 壽視 福井県立大学, 生物資源学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 海底湧水 / ラドン / ラジウム同位体 / 地下水 / 栄養塩 / 植物プランクトン / 陸海境界領域 / 沿岸域 |
研究実績の概要 |
本年度は以下の3つの研究を実施した。 ①内湾域に流入する栄養塩における地下水の役割とその空間スケールの違いを明らかにするために、若狭湾奥部の小浜湾において9月に観測を実施した。水深10 m以浅の海域(浅海域スケール)と内湾域(内湾スケール)における栄養塩収支を定量すると、どちらもスケールにおいても地下水(特に再循環性地下水)は重要な栄養塩供給源となっており、内湾スケールにおいてより重要性が大きい結果が認められた。河川とは異なり、地下水は面的に広がるため、空間スケールの拡大に伴い重要性が増加した可能性が示唆された。 ②陸棚スケールにおける地下水流入の影響を評価するため、日本最大の流域面積を持つ利根川が流入する海域を対象とし、5月に学術調査船・新青丸を用いた海洋観測を実施した(KS-21-8)。観測期間は黒潮が房総半島近くまで接近しており、利根川河口付近においても淡水(河川水および淡水性地下水)の影響はほとんど認められなかった。一方、利根川沖合の測点においてラジウム同位体の極大域が認められた。特に、226Raの極大域は河川水や淡水性地下水、黒潮続流側の海水の混合では説明できないことから、再循環性地下水の影響が陸棚スケールにまで及んでいるものと推測された。これまで河川水基準で考えられてきた従来の評価結果よりも、より沖合域にまで及んでいることを示唆している。 ③人為的な水操作によって塩性湿地内の水・栄養塩環境や沿岸域への栄養塩輸送に対する地下水の役割が変化するか,またどのような変化が生じるのかを明らかにすることを調べるために、宮城県気仙沼市の舞根地区に震災後に創出した塩性湿地において2021年8月(夏季)および2022年2月にフィールド調査を実施した。現在解析中であり、今後は地下水を含めた水と物質動態を定量的に評価し、人為的な水操作前の結果と比較する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の拡大により、予定していたフィールドでの観測は変更を余儀なくされたものの、外出制限が緩和されたタイミングで調査を実施し、必要最低限のデータを得ることができている。また、昨年度に実施した観測のデータを取りまとめ、国内および国際学会で発表することができた。加えて、成果の一つは論文として取りまとめて投稿まで進めることができ、別の成果も論文投稿に向けて執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの調査によって、河川下流域から陸棚域に至る領域で地下水を含めた水と栄養塩動態に関するデータを得ることができている。次年度は、これまでに実施したフィールド調査で得られているデータを解析し、本研究目的の達成に向けた成果の取りまとめを中心に行う。
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