研究課題/領域番号 |
20J23473
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
竹市 学 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | バレー自由度 / ノーダルライン半金属 / 対称性 / 点群 |
研究実績の概要 |
バレー自由度は固体内においてエネルギーギャップを持つ構造をしているが、対称性によってはそのエネルギーギャップがつぶれてノーダルライン半金属となる場合がある。本年度はノーダルライン半金属におけるノーダルラインの組み換えについての研究を行った。ノーダルライン半金属は波数空間でノーダルラインと呼ばれる線状の縮退を持っている。特に、空間反転対称性と時間反転対称性を有する系では、ノーダルライン半金属はトポロジカル数に保護されているため、ノーダルラインが安定的に存在できる。しかし、このノーダルラインは圧力印加などによりその形状が変化する。その際、ノーダルラインの生成、消滅、組み換えが発生しうる。そこで、様々な対称性下においてどのようなノーダルラインの変化が許されるかについて主に調べた。例えば、鏡映対称性をもつ系では、鏡映面内でのノーダルラインの組み換えと鏡映面に垂直な面内でのノーダルラインの組み換えが独立して発生していることが分かった。その組み換えの際に、ノーダルライン同士が重なることで6重縮退が生じていた。また、4回回転対称性を持つ系では、4回回転対称操作で結びつく2つの平面内で4回回転対称性を満たしながらノーダルラインの組み換えが発生していることが分かった。その組み換えの際に、ノーダルライン同士が重なることで8重縮退が生じていた。その他、一部の点群についてこのようなノーダルラインの変化について調べた。このように、それぞれの点群におけるノーダルラインの変化を明らかにすることで、特定の形状のノーダルラインを持つ物質を探索する際の指標として活用できると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでノーダルラインの変化について回転対称性や鏡映対称性といった基本的な対称性を持つ点群について明らかにしてきた。ノーダルラインの変化を対称性のもとで調べているので、物質探索への応用が期待される。また、今後より複雑な対称性を持つ点群について研究する際は、現在までの結果の組み合わせとして解釈できることが期待される。そのため、ノーダルラインの変化を対称性という観点で分類する研究の基盤ができたと考えられる。よって、現在までの進捗状況として当初の計画以上に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はノーダルラインの変化を残りの全ての点群について調べる。まず、生成子が一つの対称性のみで構成される点群から始め、簡単な対称性下で起きるノーダルラインの変化を明らかにする。次に、生成子が複数の対称性で構成される点群の場合について調べる。その際、ある点群でのノーダルラインの変化とその部分群となっている点群でのノーダルラインの変化を比較して、対称性とノーダルラインの変化について統一的な解釈を見出していく。
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